一行が振り返ると、後ろ手を組み、薄ら笑いを浮かべるクヴァルの姿があった。
後ろには大勢のディザイアンを引き連れている。


「まさか…エクスフィアは人の身体で作られているの!?」

「少し違いますね。エクスフィアはそのままでは眠っているのです。奴等は人の養分を吸い上げて成長し、目覚めるのですよ」


まるで感情のない機械が喋っているかのように、クヴァルは続ける。


「人間牧場はエクスフィア生産工場。そうでなければ、何が嬉しくて劣悪種を飼育しますか」


その言葉に肩を震わせたジーニアスが呟く。


「ひ、酷い…!」


しかし、クヴァルは蔑むようにしてジーニアスを、一行を見る。


「酷いだと?我々が大切に育て上げてきたエクスフィアを盗み、使っている君達こそ罰せられるべきでしょう」


クヴァルのその言葉が合図となり、ディザイアン達が一行を取り囲む。

じりじりと追い詰められ、苦し紛れに背後を見ると、ぽっかりと開いた暗く深い溝があった。
落ちてしまったら、確実に命はないだろう。


「ロイド、君のエクスフィアはユグドラシル様への捧げ物。返してもらいましょうか」

「ユグドラシル…それがあなた達のボスなのね」


クヴァルを睨むようにして、リフィルが言った。


「そう。偉大なる指導者ユグドラシル様の為、そして我らが功績を示す為、そのエクスフィアが必要なのですよ!…薄汚い培養体の女に持ち去られたままでしたが、漸く取り戻す事が出来ます」


《培養体の女》その言葉に、ロイドの心臓は大きく跳ねた。


「ど、どういうことだ?培養体の女って、まさか…」


ロイドの様子を見たクヴァルは、不気味な笑みを浮かべ、言った。


「…そうか。君は何も知らないのですね。そのエクスフィアは母親である培養体A012、人間名アンナが培養したものです。アンナはそれを持って脱走した。尤も、その罪を死で贖いましたが…」


ロイドは腰に下げている双剣に手を伸ばし、ゆっくりと剣を引き抜いた。


「お前が母さんを…!」


クヴァルへ飛び掛かろうとしたロイドを、クラトスが押さえる。


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