「素晴らしい!ここがバラクラフ王廟だな!!」
リフィルの高笑いと共に、クレア達一行は目的地に到着する。
例のようにコレットが神託の石盤へ手を置くと、遺跡の分厚い扉が轟音と共に重々しく開いた。
「よし、サクサクっと片付けるか」
「…お前はいつも最初だけは威勢が良いな」
軽い気持ちで一歩を踏み出したロイドを、クラトスが窘める。
「ギャアアアア!」
断末魔の悲鳴と共に封印の守護者、ハスタールが、どう、と地に墜ちる。
『再生の神子よ、祭壇に祈りを捧げよ』
守護者が消え、レミエルの声が響くと、コレットは祭壇へと足を運ぶ。
「大地を護り育む大いなる女神マーテルよ。御身の力をここに!」
コレットの背に薄桃色の羽が生え、頭上から暖かな光が降臨し、弾けた。
「よくぞここまで辿り着いた、神子コレットよ!クルシスからそなたに天使の力を、我らが祝福を受け取るが良い」
「…は、はい。ありがとうございます」
コレットが瞳を閉じるとゆっくりと光が舞い降り、その身体を包み込む。
「次の封印はここより北西、世界の中心を望む場所。彼の地の祭壇で、祈りを捧げよ」
「分かりました。…レミエル様」
コレットの返事を聞くと、レミエルは柔らかな笑みを浮かべる。
「旅の終焉は近い。早く真の天使になるのだ。良いな、我が娘……コレットよ」
暖かな光に包まれ、レミエルの姿は消えた。
(…コレット…)
「待て!」
出口を目前にしたその時、遺跡の陰から見覚えのある女が姿を現わす。
豊満な胸を誇示するかのように、大きく開けた衣装。
黒髪を結い上げ、凛と張った瞳には強い意志が宿っている。
「貴方もここに来てたんですね〜!」
「ち、近付くな!動くな!物に触るな!!」
コレットが嬉しそうに声を上げて近付くと、暗殺者は慌てふためく。
恐らく、オサ山道で嵌った落とし穴がトラウマとなっているのだろう。
「貴様らと馴れ合うつもりはない!」
暗殺者は胸元から符を取り出し、構える。
「…覚悟!」
暗殺者が符を高々と掲げると、煙幕と共に鳥のような形をした異形が出現する。
身体の色は青く、長い腕の先には鋭い爪が、背に天狗の面がついている。
「行きな、蒼雷!」
暗殺者が言うと、蒼雷はコレットに狙いを定めたようだった。
暗殺者もその後に続こうとするが、そこにクラトスが立ち塞がる。
「真空裂斬!」
「ルーンスティア!」
コレットを守るように間に入ったロイドが鎌鼬を伴う空中回転斬りを繰り出し、蒼雷の背後に着地する。
その瞬間、コレットのチャクラムが襲いかかる。
「二人共、離れてっ!」
クレアの言葉に、ロイドとコレットは蒼雷から距離を取る。
「ロックブレイク!」
すると地面から鋭利な岩発生し、蒼雷の背にある面を貫く。
既の所で魔術を避けるが、先程まで一定のリズムを刻んでいた剣玉の音がなくなり、魔方陣が出現する。
「燃えちゃえ!」
ジーニアスの声が遺跡中に響き渡る。
「――イラプション!」
溶岩流の火柱が発生し、蒼雷の身体は跡形もなく燃え尽きる。
一方の暗殺者は、その喉元に剣先を突き付けられていた。
「はぁ…はぁっ…」
「…退くか?」
クラトスが問うと、暗殺者は負けを認める。
それを聞いたクラトスは、喉元に突き立てていた剣を鞘に収め、マントを翻す。
「…くっ!どうして…勝てない?」
「正義と愛は必ず勝つ!」
「あのなー。あのアホみたいなドワーフの誓いを引っ張り出すんじゃねーよ」
ジーニアスの言葉に呆れたロイドだったが、暗殺者は一行を睨み付け、言った。
「…何が正義だ。お前達が世界を再生する時、あたしの国は滅びるんだ!!」
暗殺者の言葉にコレットは首を傾げる。
「どうしてですか?私が世界を再生したら、皆助かるんでしょう?」
「…助かるよ。この世界はね!」
そう言い残すと、暗殺者は遺跡の外へと飛び出し、軽い身のこなしで木々の上を跳躍してゆく。
「この世界…?」
「世界にこれもあれもねぇよな」
クレアとロイドが顔を見合わせると、誰にも聞こえないぐらい小さな声でクラトスが呟いた。
「あの娘…まさか…」
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