「一刻も早くアスカードへ到着するのだ!」


一行が目指すアスカードという街は、遺跡が有名な街らしく、ハコネシア峠を越えてからのリフィルはずっとこの調子だ。
誰よりも張り切り、いつもはロイドが歩いているはずの先頭を行く。


「遺跡ばっかりとか、退屈そうだなぁ…」


最後尾を歩きながら、ロイドは独り言ちた。
はずだったのだが、遺跡モードであるリフィルの耳に届いていたらしく、


「ロイドーーっ!!」


物凄い勢いでロイドへと歩み寄り、鳩尾に強烈な蹴りを食らわせる。
弧を描くようにして宙を舞ったロイドは、頭から地面に直撃する。


「…ロイド、姉さんが信じてるものを貶すのは自殺行為だよ」


ぴくりとも動かないロイドの側へと駆け寄って、ジーニアスが囁いた。






漸く目的のアスカードに到着した一行は、手当たり次第に街を巡る。
住民からの情報により、街の奥にある何百段という階段を上ると、巨大な石舞台があった。

最後の階段を上るや否やリフィルが奇声を発し、滑滑とこの石舞台についての歴史背景を述べてゆく。
真剣に聞いているコレットとクレア、ジーニアス。そしてその後ろで溜め息を吐くクラトス。
ロイドはというと、勉強から逃亡する為に石舞台の周りを探索していた。
少し進むと、何やらリフィル達とは別の話し声が聞こえ、耳を澄ます。


「し、しかしハーレイ…これは貴重なバラクラフ王廟の遺跡だ。この石舞台を破壊するなんて…」

「何を言うんだ。このままだとアイーシャは殺されるかもしれないんだぞ」

「何やってんだお前ら」


ロイドが声を掛けると、


「ち、違いますよ!僕達は別に遺跡を破壊するつもりでは…」


柔和な顔立ちに眼鏡を掛けた藍色の髪の青年が振り向き、慌てて弁解を始めるが、時既に遅し。


「…今何と言った!?」


石舞台の上には、怒りに眦を吊り上げるリフィルの姿があった。


「先生、こいつらこの石舞台を破壊するんだってよ」

「貴様、それでも人間か!」


石舞台から飛び降りたリフィルは、ハーレイと呼ばれた赤髪の男につかつかと歩み寄り、腹部に蹴りを一発見舞う。


「お前達にはこの遺跡の重要性がまるで分かっていない!いいか、この遺跡はバラクラフ王廟の最盛期に…」


――カチッ。


リフィルが遺跡について説明を始めたその時、何かが作動したような機械音が鳴る。


『…あ』


図らずも、三人の声が揃う。


「…先生」

「何だ、質問なら後で受け付ける」

「爆弾の、スイッチが入った」

「質問なら後でと言って………何?」


慌てて自らの手元を辿ると、しっかりと起動スイッチの上に乗っていた。


「女!お前の所為でスイッチが入って…うっ!」

「人の所為にするな!それより早く解除しろ!」


リフィルはハーレイの胸倉を掴み、これでもかというぐらい前後に激しく揺らす。


「そんなものあるか!」

「威張るな!」


リフィルは掴んでいた手をぱっと離し、そのままハーレイを突き飛ばす。


「仕方ねぇ、俺が解体する」


そう言うとロイドは爆弾の元へと歩み寄り、器用に解体してゆく。


「お前、器用だな。制御不能の『ブレイカー』を止めるとは…」


いつの間にかロイドの近くで作業の一部始終を見ていたハーレイが言う。


「制御出来ないもんを作るなっつーの」

「…遺跡は傷付いていないようだな」


そうこうしている内に、騒ぎを聞き付けたクレア達が駆け付ける。


「ロイド、先生、どうしたの…」

「誰かいるのか!?」


クレアが声を掛けた瞬間、老人の怒鳴り声が石舞台の裏まで響く。
それに一早く反応したのは、爆弾を仕掛けた男達だった。


「いけません町長です」

「やべぇ、逃げるぞ!」


男達は一度目配せした後に頷き合い、一目散に逃げて行く。


「先生!面倒そうだぜ、早く逃げよう!」

「ああ…。もっと調べたかったのに…」


石舞台の感触を楽しんでいたリフィルを無理矢理引っ剥がし、逃げる男達の後を追った。






「お前達は、さっきの観光客」

「私は学者です」

「何でも良い、出て行け!」


ハーレイが扉を閉めようとすると、柔和な顔立ちをした藍色の髪の女性がそれを制止する。


「アイーシャ…このままだとお前が生贄になるんだぞ」

「そ、それは…」


ハーレイが言うと、アイーシャの顔は青褪め、俯いてしまう。


「…生贄?」

「風の精霊をお祀りする儀式です。妹は――アイーシャはそれに選ばれてしまったんです。元々はただ石舞台で踊るだけの儀式だったのですが…」


ハーレイはロイドの問いに答えていた藍色の髪の男を小突く。


「この馬鹿が石舞台を調べようと勝手に封印を開いたんだ。お陰で風の精霊とやらが甦って、生贄を要求してきたのさ」


その言葉に、一同は顔を見合わせる。


「封印…とは、若しや」

「そうなんです。伝説通り、封印は存在したんです!」

「バラクラフピラーの象形文字は、神話ではなかったのか!」


遺跡モードに突入したリフィルは仲間達の声も届かず、藍色の髪の男――ライナーという名前らしい、と聞いている方は訳が分からないような会話を始めた。


「俺達が探している封印じゃないみたいだな」

「まあ良かろう。…満更回り道という訳でもない」


ロイド達が半ば呆れていると、激昂したハーレイに家を追い出されてしまった。


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