「…っ…うぅ…」
紅髪の少年が膝を抱えて泣いていた。銀世界の中に、雪がちらつく。
(…?)
クレアはそっと少年に近付き、声を掛ける。
「…どうして泣いているの?」
そう言って少年の肩に触れると、クレアの身体が透け始める。
ゆっくりと顔を擡げた少年と目が合う。
髪の色とは対照的な、海のように澄んだ蒼い瞳。
『僕な…か……れば…』
結局夜が明けてから眠りに就いたクレアは、目の下に黒々としたクマが出来ていた。
「おはよう、クレア」
コレットは昨日の内に燃え切ったであろう、薪の燃え殻を片付けていた。
ちらりと彼女を一瞥すると、クレアのようなクマは出来ておらず、充血さえしていなかった。
スピリチュア像を手に入れた一行は、それと引き換えに再生の書を手に入れる――とは言っても、持ち出しは叶わなかったので読むだけなのだが、に成功した。
コレットとクレアが天使言語で書かれたそれを、封印に関する部分のみ交互に読み上げる。
「荒れ狂う炎。砂塵の奥の古の都にて街を見下ろし、闇を照らす」
「清き水の流れ。孤島の大地に揺られ、溢れ、巨大な柱となりて空に降り注ぐ」
「気高き風、古き都、世界の…。…巨大な石の中心に祀られ邪を封じ聖となす」
「煌めく…、神の峰を見上げ世界の柱を讃え、…古き神々の塔の上から二つの偉大なる…。…あとは壊れてしまってます。読めません……」
二人が読み上げるのを黙って聞いていたロイドが声を上げる。
「荒れ狂う炎って奴は火の封印、清き水の流れって奴は水の封印のことだろ。他はどういうことだ?」
「風の封印は…アスカード遺跡だろう。アスカードに行けば、何か手掛かりがあるはずだ」
リフィルが遠い記憶を探るようにして答えると、
「神の峰を見上げてっていうのは?」
ジーニアスが問う。それにはコレットが答えた。
「多分、マナの守護塔だと思う。…何の封印かは分からないけど…」
「とにかく、封印の場所は分かったんだし、早速行こうぜ!じーさん、ありがとな」
「助かりました〜」
ロイドのお礼には目もくれず、コレットの言葉ににこりと微笑んだ老人に別れを告げて、一行は風の封印の手掛かりを求めてアスカードを目指す。
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