「私、なにかレミエル様の御不興を買うようなことをしたのかな…?」
封印を解放した一行が出口を目指している途中にコレットが誰となく訊いた瞬間、彼女はその場に崩れ落ちる。
隣にいたクレアが身体を支え、慌ててリフィルを呼ぶ。
「大変だわ。とにかくすぐに休ませましょう」
「夜営の準備だな」
クラトスの言葉に皆は無言で頷く。
「…それにしても、封印を解放する度こうだとすると、コレットも辛いわね。さしずめ天使疾患とでも言うのかしら」
「ごめんね、皆…」
辛いのは自身であるというのに、コレットは申し訳なさそうに言った。
夜営の準備が整い、仲間達がぐっすり眠っている頃、コレットは一人で満天の星空を眺めていた。
(私、今度は…)
自身の細い身体をぎゅっと抱き締めた時だった。
何かがこちらに向かって来る音が聞こえ、コレットの背後で止まる。
服の中にあるチャクラムへと手を伸ばした時、暖かい毛布が掛けられた。
「…星を見てたの?」
クレアはニコリと微笑み、コレットの隣に腰を下ろす。
「うん…。なんだか眠れなくて」
「あまり無理しちゃ駄目だよ?」
「えへへ…ごめんね」
二人はにクスクスと笑い合い、空を見上げる。
「星…綺麗だね…」
「…うん」
そうして二人は世界再生の旅のことや、イセリアにいた頃の思い出を一つ一つ、胸に刻み込むように語った。
「ねぇ…コレット…」
時に、クレアが消え入りそうなほど小さな声で言った。
コレットが「なぁに?」と微笑み掛けると、クレアは真っ直ぐにコレットを見つめ、訊いた。
「眠れないの?」
「えっ…」
「…眠くないの?」
「う、うん今日はあんまり…」
クレアは一度俯いた後、大きく息を吸い込み、心を決めて言った。
「…天使化の本当の意味は、人間性の欠如。私も、マナの血族だから聞いたことはあったの。具体的に何が失われるのかは知らなかったけど…」
正鵠を射たクレアの言葉に、コレットは視線を逸らし伏し目がちに俯く。
「そっか…。でも、皆には言わないでね?」
クレアがゆっくりと頷くのを見ると、コレットは微笑んだ。
「ありがとう、クレア」
「…あ、あのね、私、コレットが…。…ううん、やっぱり何でもない」
コレットはもう少し星を眺めているということで、クレアは先に陣へと戻ることとなった。
途中、大粒の涙が零れ落ちる。
(…コレットは今、辛いのに何も出来ないなんて…私、無力だ…)
このままでは泣き止みそうにないので、少し陣を出て海へと向かった。
潮風が髪を優しく撫で、さざ波が心地好い。
しかし、夜の海は真っ暗で少し不気味だった。
浜辺に座り込み、クレアは瞳を閉じる。
(次の天使化では一体何が失われてしまうの…?神様、どうか、コレットを救って下さい…!)
胸の前で手を組み、クレアは祈りを捧げた。
閉じられた瞳からは、止処なく涙が零れ落ちる。
to be continued...
(09.09.16.)
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