「ここが最上階のようだな」

「はい。あれが祭壇です」

「じゃああそこで光ってるのがクルシスの輝石か」

「そだよ。私、あれを握って生まれてきたんだって」


――《クルシスの輝石》

それは、コレットが神子である証ともいえる美しい宝石。
また、歴代の神子の中でもクルシスの輝石を握って生まれた神子は特別で、16歳になると世界再生の旅に出るのだ。


「あ、見て!光が!」


ジーニアスが指差した先、ドーム状の天井から柔らかな光が降り注いだ。頭上で弾けたそこから何かがぼんやりと姿を現した。人型のようにも見える。
蜂蜜色の髪。穏やかな笑み。緑色の法衣。これだけなら聖堂の祭司達と何ら変わりないだろう。しかし、決定的に違う箇所がひとつ。
その背中には、純白の翼が生えていた。


「我が名はレミエル。マナの血族の娘コレットを新たな神子として天に導くクルシスの天使。世界の中心で眠るマーテルさまを、目覚めさせる時がきた」


天使レミエルが手を翳した。すると、祭壇に安置されていたクルシスの輝石が淡い光を放ち、宙に浮いた。
軌道のようなものはなくふわふわ漂うそれはコレットの目前で止まり、そして、弾けた。

宝石と、宝石から伸びた金色の装飾が光を浴びてきらりと輝く。
レミエルは満足そうに微笑んだ。


「今この時よりコレットは再生の神子となる。我々クルシスはこれを祝福し、シルヴァラントに救いの塔を与えよう」


天使が指し示した窓の先には、天高くそびえ立つ白い塔があった。
一体どこまで続いているのだろう。その塔は上空に浮かぶ雲を突き抜け、さらに上へと伸びていた。

「救いの塔」は、その名の通り救いの象徴であると同時に、世界再生の旅の最終目的地である。
あそこにたどり着くことが出来ればディザイアンは封印され、枯渇しかけているマナがシルヴァラント中に満ちるのだ。


「再生の神子コレットよ。救いの塔を護る封印を解き、かの地に刻まれた天の階を上れ」

「神子は確かにその任を承りました」

「よろしい。我らクルシスは、そなたが封印を解放するごとに天使の力を与えよう。そなたが天使として生まれ変わった時、この荒んだ世界は再生される」

「ありがとうございます。必ず世界を再生致します」

「まずはここより南の方角にある火の封印を目指すがいい。かの地の祭壇で、祈りを捧げよ」

「はい、レミエルさま」


背中の純白を羽ばたかせ上昇するレミエルは、まさしく「天使」と形容するに相応しい柔らかな笑みを浮かべていた。

…聞くなら今しかない。
そう思ったコレットは、意を決して天使を呼び止めた。


「レミエルさまにうかがいたいことがあります。レミエルさまは、本当に私のお父さ…」

「まずは火の封印だ。よいな、我が最愛の娘コレットよ」

「お、お父さま…!やはりレミエルさまが私の本当のお父さまなのですね!?」


神子は天使の子供だと、古くからそう言い伝えられてきた。
コレットの父フランクは義理の親で、コレットの生みの親は別にいる。とは言ってもコレットにとってのフランクは「父親」であるし、フランクにとってのコレットはただ一人の「娘」である。血縁関係がなくても、二人は家族であり、同時に親子なのだ。


「次の封印で、また会おう。我が娘よ」


残された天使の羽根が、ふわふわと舞い上がる。














to be continued...

(09.07.18.)


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