「ほら見ろ!教皇なんかが出しゃばって俺さまを追放したりするから、世界が大変なことになったじゃねぇか」
「では神子よ。…どうするというのだ」
王を前にしているというのに、ゼロスの態度は相変わらずだ。
そんな彼らのやり取りを眺め、ヒルダが微笑む。
「元シルヴァラント領のイセリアに、和平の使者を送るんだよ」
「使者?誰を使いに出すのだ?」
「ミズホの里のしいながいいんじゃないか?因縁があるんだから」
そう言ってゼロスは笑みを浮かべる。
非常に彼らしいその表情は、以前とどこか少しだけ違う。否、少し、よりも少ないかもしれない。
けれどヒルダの脳裏には、栗色のあの少女が思い浮かんだ。
「死の使者から、平和の使者か…」
「嫌とは言わせねーぞ。マーテル教会をどうにかするまでは、俺さま、まだ神子の権利を持ってるんだぜ?」
*prev top next#