「…戻ってきたのか?」


地上に戻ってきたクレア達一行を待っていたのは、一つになった新しい大地。
けれどその姿は以前と何ら変わりなく、マナの量が増えているようには感じられない。

一行の目前に、精霊達が姿を現した。


『願いは叶えた。しかし、《楔》がない。《楔》がなければ大地は死滅する』


元々世界は滅亡を防ぐ為、二つに分けられた。
あるべき姿に戻れば、世界を支えるマナは不足する。

大地は…消滅しようとしている。


「どうしたら大地を守れるんだ!」

『二つの世界を支える為に、大樹を《楔》とする。大地の滅びを防ぐには、それしかない』


デリス・カーラーンが離れてしまう前に、大樹の種子にマナを照射する。
小さな若木では《楔》としての役割を果たせなくても、大樹カーラーンが目覚めれば《楔》として機能するだろう。

ロイドは再び、エターナルソードを構えた。


『既にデリス・カーラーンは大地の引力圏を離れようとしている。これを引き留めることは、かつてのユグドラシル…。ミトスすら出来なかったことだ。それでもやるのか?』

「ああ」

『エクスフィアで強化していても体が持たないだろう。それでも、本当にやるのか?』


いくら強靱な精神力を持っていたとしても。
‘心’が壊れるかもしれない。
‘命’を、失うかもしれない。

けれどロイドの答えは、既に決まっていた。


「やるったらやるんだよ!やんなきゃどうしようもないだろーが!」

『……承知した』




第60話




「どうしてだ!?マナが弾き返されちまう!」

「《大いなる実り》が…死んでしまっているんだわ」


このままでは、何一つ変わらない。
残された僅かなマナを消費して、世界は滅びてしまうだろう。

だけどそれは嫌なんだ。

みんなと一緒に。
世界と一緒に。
大切な仲間と一緒に。
大地と一緒に。
大好きな人と一緒に。

‘生きていたい’から。


「待て!行かないでくれ!頼むから目覚めてくれ!!」


ロイドのエクスフィアが眩い光を放ち、彼の背中に美しい羽が出現した。
仲間達が目を見張る中、ロイドは純白のそれを羽ばたかせて《大いなる実り》の元へと向かう。

無我夢中で、必死に。

そんな彼の体を、あたたかな光が包み込んだ。


(これは…)


粒子が若草色の蕾へ吸い込まれると、デリス・カーラーンと《大いなる実り》は動きを止めた。
羽を広げたコレットがロイドの隣に並び、その様子を見守る。

――その時。

消滅したはずのエターナルソードが、ロイドの手中に収まった。


「よかった…!」

「これが最後の願いだ。エターナルソード…」

「《大いなる実り》を…目覚めさせて!」


たくさんの命を犠牲にしてきた。
たくさんの願いを背負っている。

人間、エルフ、ハーフエルフ、動物、植物、有機生命体、無機生命体。シルヴァラント、テセアラ、デリス・カーラーン。

‘命’ある限り。

世界と共に。
大地と共に。
時間と共に。
心と、共に。

――‘生きていたい’


「目覚めろ、大樹カーラーン!」


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