クレアの腕の中で笑ったミトスの姿は消え、《クルシスの輝石》だけが残った。
主を失ったそれは独りでに光り輝き、玉座の前で停止する。
ミトスは、虚ろな瞳でクレア達一行を見つめた。
「アリシアと同じです!《クルシスの輝石》がある限り、ミトスは生き続けます」
『そして…いずれは輝石に支配される。もうお前達の正義ごっこに付き合うのはごめんだ。さっさと輝石を…壊せ。でないとデリス・カーラーンは離れていく』
早くしなければ、ミトスはミトスでなくなる。
それを分かっているのに、ロイドは剣を抜くことを躊躇った。
彼は、優しいから。
けれどミトスは、そんなロイドを叱責した。
『…早くしろ!ボクも…ボクではなくなる』
「ロイド!ミトスを…助けて!ミトスのままで…逝かせてあげて!」
涙を流す親友達の姿に、ロイドは静かに頷いた。
『さよならだ、ボクの影。ボクが選ばなかった道の最果てに存在する者』
ボクはボクの世界が欲しかった。
だからボクは後悔しない。
ボクは何度でもこの選択をする。
『この選択を――し続ける!』
輝石から弱々しい光が発せられ、ミトスの姿が掻き消えた。
粉砕された《クルシスの輝石》は、粒子となってロイドの周囲を舞う。
そして、彼のエクスフィアに吸い込まれた。
「…ここに…俺達の世界にいてもよかったのに。バカ野郎…」
最後まで、彼と分かり合うことは出来なかった。
暗い闇から、彼を救い出すことが出来なかった。
だけど私は、どこかでまたミトスと出会いたい。
そう思う。
嬉しさも悲しさも分かち合って。
本気で怒って。
時には泣いて。
たくさん笑って。
同じ時を、歩んでいきたい。
(だから、)
鞘に収められていたはずの双剣が、光となってクレア達一行の目前に姿を現す。
赤い光はフランヴェルジュ。
青い光はヴォーパルソード。
二つの剣が重なり合い、一つの大剣が誕生した。
紫色に輝くそれへ、ロイドはゆっくり手を伸ばす。
『古き契約の主は消えた。新たなる契約の主よ。この剣に何を願う?』
たくさんの命を犠牲にして、クレア達一行はここまで来た。
人間、エルフ、ハーフエルフ。
シルヴァラントで暮らす人々やテセアラで暮らす人々。
クルシスやディザイアン、レネゲードの命も背負っている。
大きな鳶色に決意を滲ませ、ロイドは天高く剣を掲げた。
「二つの世界を、あるべき姿に!」
to be continued...
(11.04.17.)
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