長い時間を生き続けるのはさぞ辛かっただろう。
あなたは純粋だから、世界の汚い部分を見ていられなかったでしょう。

迷い、悲しみ、苦しみ、憎み。

だけどね、

疲れたら、ゆっくり眠っていいんだよ。
「もう嫌だ」って愚痴をこぼしてもいいんだよ。
辛くなったら、誰かに甘えたっていいんだよ。

泣きたい時には、泣いていいんだから――。




第59話




「みんな…多分これが最後だ。準備はいいか?」


クレア達一行は遠くに見える《大いなる実り》と台座を見つめ、それぞれの決意を胸に抱く。

いの一番に口を開いたのは、リフィルだった。


「私は問題なくてよ。これから起こる戦いを、あるがままに受け入れる。…そして勝つわ」


変わることが怖かった。
今までの自分を否定することで、何もかもが変わってしまうんじゃないかと思ったから。

だけど何かを変える為にはまず、自分自身が変わらなくては。



「ああ、勝つよ。ミズホの里のみんなや、コリンや…臆病だったあたしを信じてくれたみんなの為にも」


‘命’を失う。それは、暗くて悲しい。
どんなに願っても、失われた‘命’は蘇らない。

だからあたしは、みんなの願いを背負って戦う。


「そして…自分の為にも。もう誰も、私みたいな間違いは繰り返して欲しくないから。自分が犠牲になれば…それでいいなんて、歪んだ考え方は駄目だから」


そうするしか方法がないと思っていた。
だけどそれは間違いで、ただの自己満足だったのかもしれない。

私にはみんながいる。
大好きな世界がある。
この世界で、みんなと一緒に生きていたい。


「誰だって、みんな当たり前に暮らしていいんだよね。この世界にいてもいいんだよね。人も、エルフも…ボク達も」


疎まれて、嫌われて。
心も体も傷付けられて。

そんな思いは、もう誰にもして欲しくない。
ハーフエルフも、人間も、エルフも。


「だから我々は、この戦いでミトスから《大いなる実り》を取り戻し、大樹を甦らせなければならぬ。それがなければ、胃種族の間のしこりを取り除くことはおろか…」

「世界は…滅亡します。それは、悲しいことです。私達は世界を統合して、新たな世界に、新たな約束を結びましょう」


この世に生を受け、時間と、大切な人と共に生きてゆく。
けれどプレセアは時間を失い、リーガルは大切な人を失った。

きっと彼らの他にも、同じ思いをした人はたくさんいるはずだ。


「俺さまが好きな奴も、俺さまが嫌いな奴も、俺さまの住む世界にいていいってこった」


それが「当たり前」なんだからな。
ゼロスは、言う。


「だから俺も…逃げないぜ」


いつだって逃げ出したくて仕方がなかった。
後ろばかり向いていた。

だけど今は違う。
大切な仲間が、心の底から愛する人がいるから。
勇気を出して立ち向かう。

怖くても、迷っても。
もう、独りじゃない。


「…よし、行こう!誰もが、生きていることが当たり前の世界を取り戻す為に!」


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