「暑い…な」

「暑いね…」

「きっともうちょっとだから…頑張ろう?」


クレア達はコレットの手掛かりを探すため、イセリアから一番近いトリエットを目指していた。
しかし、道中は砂漠。
慣れない砂に足を取られ、灼熱の如く燃える太陽に見る見る水分を奪われる。

必死の思いで《砂漠の花》とも呼ばれるトリエットに到着すると、先回りをしていたディザイアンによる手配書が街中に貼られていた。
それにはロイドの似顔絵が描かれていたが、お世辞にも上手いとは言えない。


「…俺、こんなに不細工か?」

「よかったね。これなら見つからないよ」

「ぷっ…そ、そうだよロイド!」

「お前ら…」


――その時。

何かが目にも止まらぬ速さで二人に直撃した。
身体に痺れを感じたと思った瞬間、意識が途切れる。


* * *



「ここは…?」

「どうやら俺達、捕まったみたいだぜ」

「ロイド!」


上体を起こすと、ロイドは腰掛けていた椅子から立ち上がった。


「じゃ、脱走しますか」

「ふぇ…?」


そして見張りのディザイアンに向かってソーサラーリングの炎を放った。


「よし、今だっ!」

「きゃあっ!」


力ずくで鉄格子を外し、クレアの腕を掴んで走り出す。
幾度かディザイアンに見つかりそうになるが、なんとかやり過ごす。

その途中で恐らく牢屋に入れられる直前に取り上げられたロイドの双剣を取り戻す。

しかし、建物の構造は複雑に入り組んでおり、到頭四方を囲まれてしまった。
内心悪態を吐くも、逃げ場がない。


「クレアっ!」

「わわっ!」


ロイドに強く腕を引かれ、転倒しそうになりながらも必死に走る。
二人が扉に入ると、どうやら鍵が掛かったらしく、追っ手が来る気配はない。

ほっと胸を撫で下ろしていると、


「…何者だ!」


二人は慌てて後ろを振り向く。
すると、空のように蒼い髪を一つに結っている若い男が居た。
長いマントを羽織っており、中には軽い鎧のようなものを身に付けている。


「人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗るモンだぜ…?」

「ふっ、貴様のような下賤の者に名乗る名前は生憎持ち合わせていない」


そう言い放った男の掌に密度の濃いマナが集中されていくのが分かる。
後ろにいるクレアを庇うようにして防御姿勢を取ると、左手のエクスフィアが男の目に留まった。


「それはエクスフィア!…貴様がロイドか」


先程まで二人に向けていた手を下ろすと、男はロイドに一歩近付き、彼の顔を注視する。


「…だったら?」

「…なるほど、面影はあるな」

(面影…?)

突然警報が鳴り響き、クレア達が部屋に入った時とは別の扉が開く。
するとマーテル教会聖堂でコレットの命を狙ってきた男が入って来る。


「リーダー!神子達が侵入して来た模様ですぞ」

「…分かった。ボータ、私は一旦退く。奴に私のことを知られては計画が水の泡だ」

「神子の処理はいかがしますか?」

「お前に任せる」


そう言って蒼い髪の男は扉の奥へと姿を消した。
それを確認すると、武器を手にしたボータが二人へと躙り寄る。


「ろ…ロイドぉ」

「大丈夫だ、クレア」


口では大丈夫と言っているがボータはかなりの手慣れである。
武器の構えに一切の隙がない。
ロイドの額から一筋の汗が伝ったその時だった。


「二人共、だいじょぶ!?」

(この声は…!)


嬉しさ半分、驚き半分で後ろを振り向くとそこにはコレット、ジーニアス、クラトスの姿が。


「み、皆ぁ…!」

クレアは溢れんばかりの涙を瞳一杯溜め、コレットに駆け寄る。


「で、でもどうしてここが…?」

「積もる話は後だ」

「…は、はいっ!」

「丁度いい。ここで神子諸共、始末してくれようぞ!」


ボータの声とほぼ同時に二つの扉からディザイアン達が駆けて来る。
その数はザッと二十人以上だろう。
だがクレアにはもう恐怖という感情はなかった。
神子が――コレット達が駆け付けてくれたのだから。


「行くぜ、虎牙破斬!」

「ピコハン!」


ロイドとコレットが中心になり、敵の動きを掻き乱す。
その間に詠唱が終わったジーニアスの魔術が炸裂する。


「エアスラスト!」


その間クラトスはボータと対峙していた。
やはりボータは他のディザイアン達とは桁違いに強い。
しかし、クラトスの方がそれを上回っている。


「剛・魔神剣」


剣を地面に叩き付けるようにすると、目前に衝撃波が生まれる。
ボータが守りの体制に入ったその時、


「――光よ」


クレアの声が響く。


「フォトン!」


ボータの周りを光の魔方陣が包んでゆく。
その隙にクラトスがボータの武器を弾き飛ばした。


「ぐっ…貴様に対して私一人では荷が勝ち過ぎたか」


言い残し、ボータは奥の扉へと撤退して行く。
それと入れ替わるようにもう一つの扉からリフィルが現れる。


「これは…確か…」


ボータの武器の先端に付いていた青い宝石を器用に外し、自身のポケットにしまいこむ。


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