「クレア!」
誰かに名前を呼ばれ、抱きしめられた。
気付けばミトスの姿は消えている。
頬をくすぐる真紅を見つけ、クレアは思わず微笑んだ。
「…本当に」
「え?」
「…本当に、心配したんだからな」
捕えられていた仲間達とは再会を果たすのだが、クレアの姿だけが見当たらない。
体を失ったミトスが次の苗床にするのではないかと、嫌な想像が脳裏をよぎった。
彼は、少なからず彼女を気に入っていたから。
「ありがとう、ゼロス」
ゼロスは「シット」してくれるのが嬉しいって、言ってくれた。
私一人じゃコレットを助けられなくても、みんなで協力すればいいんだ。
私が迷ったその時は、大切な仲間が進むべき道を教えてくれる。
(…それに)
ぎゅっ、と。
クレアを抱きしめる腕に力がこもった。
痛いぐらいの想いを感じるから。
本当に心配してくれたんだって、伝わるから。
あたたかい気持ちも、そうじゃない気持ちも、みんなみんな私の宝物。
「クレア!よかった…。無事だったんだな」
「うん!心配かけてごめんね」
「ロイド…。少しぐらい空気読みなよ」
「そうね。これではゼロスがあんまりだわ」
クレアが首を傾げれば、コレットは嬉しそうに言葉を紡ぐ。
「ゼロス、クレアが見つからなくてすっごく焦ってたんだよ!」と。
顔に熱が集中すると同時に、ゼロスの腕から、胸から熱が伝わる。
「ゼロスくんもクレアさんも…真っ赤、です…」
「見せつけてくれるねぇ」
「初々しいな」
嬉しいけど恥ずかしい。
この気持ちが生まれるのは、ゼロスのことが「好き」だから。
私がヒルダ姫にシットしたのも、ゼロスのことが「好き」だから。
クレアはゼロスの背中に手を回し、静かに、彼の鼓動を感じた。
to be continued...
(11.04.15.)
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