「契約者しいなの誓いはただ一つ。自分が自分らしく生きられる世界を…誰かが無意味な死の犠牲にならない世界を取り戻す!それだけだ」

『では契約者しいな。そしてロイド。お前達に、私の力を預ける』


死力を尽くし、クレア達一行はオリジンとの契約に成功する。
一行が互いに背中を預けられる関係だからこそ、オリジンに認められたのではないだろうか。

精霊との契約は力と心を試すものだと、以前しいなに聞いたことがある。


『エターナルソードを、全ての命ある者を救う剣とせよ。しかし、エターナルソードはミトスとの契約のまま、エルフの血を引く者しか使えない。お前自身の力で使いこなし、あの剣とお前との間で、もう一度新しい理をひくがいい』


オリジンの体が眩い光に包まれ、収束したそれが強く瞬く。
あまりの眩しさに目を覆ったクレアだったが、しいなの手の平に収まった契約の指輪を見て、柔らかい笑みを浮かべた。


「やったね、ロイド!…う、うわぁ!」


ジーニアスの声に振り返ったロイドを目掛け、弱々しい光が走ってゆく。
その光がロイドの体を包むと、彼の背後にミトスの姿が現れた。

半透明の体で、ロイドを優しく抱きしめる。


「や…やめ…ろぉー!」


じわじわ、意識が侵食されてゆく。
額に張り付いた輝石が根を伸ばすと、体が自由を失っていった。


「ミトスよ!《クルシスの輝石》に宿って生きていたんだわ。このままでは、ロイドの体が乗っ取られてしまう!」

「ロイド!」


根を伸ばしきるその前に、駆け出した一人の少女が《クルシスの輝石》を無理矢理剥がし、自身のそれに寄生させた。

彼女の瞳は天使化したあの時のように、虚ろに。
普段の優しげな表情からは想像出来ない視線で、コレットは一行を蔑む。


『くそ、邪魔されたか!まあいい。この体はもらっていく』

「待て!コレットを返せ!約束したんだ…世界を統合したら二人で旅に出るって…!コレットを返せ!!」

『あはははは、知るもんか!ボクはこの汚らわしい世界から出ていくんだ!』


どちらか分からない《クルシスの輝石》が煌めくと、コレットの姿は跡形なく掻き消えていた。
辺りを見回しても、柔らかな金糸はどこにも見当たらない。

ふと、森に棲む鳥達がばさばさと飛び立った。
見れば、《救いの塔》の城壁が崩れ始めているではないか。

天高くそびえ立つそれは巨大な隕石となり、容赦なく地上に降り注ぐ。


「《救いの塔》が崩れる!?」

「ミトスだ!奴がデリス・カーラーンへの進路を塞いだのだ!」

「くそ!とにかくエルフ達を避難させよう!このままじゃ村は壊滅だ!」


クレア達一行が逃げ惑うエルフを救出し村の入口へ向かうと、まるで初めから存在していなかったかのように、《救いの塔》は崩れ去った。

すると、塔のあった場所の空が濁り始める。
惑星のようなあれは、一体…?


「あれが…デリス・カーラーンだ」

「まさか!あんなところに星が存在出来る訳がないわ!」

「その不可能を可能にするのが、エターナルソードだ。《救いの塔》から発せられていた障壁によって隠されていたが、四千年間、常にあの場所に存在していたのだ」

「そうです」


ユアンの言葉の続きを紡いだのは、柔らかな若草色だった。
けれど以前見た彼女とは、どこか違うような…?

知っているはずなのに思い出せない。
クレアは、胸元のエクスフィアに手を翳した。


「そして今、ミトスは《大いなる実り》をもって、デリス・カーラーンごとこの大地を去ろうとしています」

「タバサさん!元気になったんですね」

「…ええ」


プレセアの言葉に、タバサは柔らかく微笑んだ。


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