石碑が黄金色に輝き、クレア達一行の前で封印が解かれる。
精霊王オリジンが、一行の前に姿を現した。


『資格なき者よ。私はすべてに失望している。お前も私を失望させる為に現れたのか?』


聖人君子のような顔立ちに、四本の腕を持つ。
背には翼のようなものを生やし、彼の周囲を小さな宝玉が回転している。


「オリジン。お前はミトスとの契約に縛られていないのか?」

『我の解放と共に、ミトスとの契約は破棄された。もはや何人なりとも、我と、我そのものを行使することは出来ぬ』

「誓いを立ててもダメなのか?俺達は、エターナルソードで二つの世界を一つに統合したいんだ」


世界を統合し、大樹カーラーンを復活させる。
それがクレア達一行の旅の目的であり、叶えるべきこと。

たくさんの人の願いと想い、そして掛け替えのない‘命’を背負って一行はここまでやってきた。


「このままじゃ世界は永遠に搾取されあって、みんな絶望しちまう!」

『それは自らと違うものを認められない、人という生き物の弱さから発生したことだろう』


確かにオリジンの言う通りなのかもしれない。否、事実そうなのだろう。
人という生き物の‘心’が弱いから、絶望し、悲しみ、嘆くのだ。

けれど「弱い」ことは、悪いことじゃない。
すべてが強くたって、何の面白みもないはずだ。

「弱い」と「強い」があるからこそ、この世界は鮮やかに色付く。
そう思うのは、人ゆえの愚考なのだろうか。


「でも間違いは、気付けば正せるはずだ」

『取り返しのつかないこともあろう』

「それでも、出来る限りのことをしなくちゃ」

「俺は諦めたくない。誰だって生まれたその瞬間から生きる権利がある。それを取り戻したいんだ。人も、エルフもハーフエルフも、ドワーフも精霊も…みんな、自分であるってだけで生きてる価値があるはずだろ!」


自分が自分でいられる。
自分として生きている。
それって、どれだけしあわせなことなのだろう。

当たり前だと思うかもしれない。
だけど私は『私』としてここに存在していられることに、感謝したい。

エクスフィアに寄生された人達は自我を失った。
心を失った天使達は、自分が誰なのかも分からず、ただ、生きている。

クレアは、胸元のペンダントを強く握った。


「オリジン…。私は長い間この世界を救うのは、ミトスの言う理想にすがるしかないのだと思っていた。かつてあなたがミトスの理想に共鳴したように、私もそれしか手段がないと思っていた」


人間はハーフエルフを蔑み、彼らはそれに怯える。
歩み寄ろうとしないエルフとは、どうやって溝を埋めたらいいのだろう。

差別をなくす為には、皆が同じになるしかないのだと。そう思った。
だが、それは違った。

人の‘心’は、例え少しずつでも、変わることが出来るから。


「しかしロイドは違う。何かを変える為には、自分が動かねばならぬことを教えてくれた。誰かの力に頼り、理想に共鳴しているだけでは…駄目なのだと」


刹那の沈黙の後、オリジンは一行を見据えた。


『召喚の資格を持つ者よ。誓いを立てよ』

「それじゃあ…!」

『今一度人を信じてみよう。お前が言った誰もが等しく生きられる世界の為に、私も自ら動く』


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