ヘイムダールよりも更に深緑に溢れるここは、オリジンの眠るトレントの森だ。
そして森の奥にある石碑の前で佇むのは、クラトス・アウリオン。

クレア達一行の気配を感じ、彼は振り返った。


「…来たか」

「どうしても戦うのか」

「今更何を言う。中途半端な覚悟では…死ぬぞ。オリジンの契約が欲しくば、私を倒すがいい」

「それが…あんたの生き方なのか」


クラトスは答えない。
が、ロイドはそれを無言の肯定と受け取った。

仲間達を見回し「任せてくれ」と彼は言う。


「一人で大丈夫なのか?」

「ロイドは負けません。クラトスさんや、クルシスが犠牲にしてきたものすべてを、ロイドは背負っているんだもの」


そう言って真っ直ぐクラトスを見据えるのは、コレットの大きな双眸。
彼女の瞳には、否、仲間達誰一人の瞳にも『不安』という感情は一切宿っていない。

ロイドを信じている。
例え武器を取らなくても、クレア達一行はロイドと共に戦っているのだ。

クラトスが長剣を引き抜くと、ロイドは腰の双剣を構えた。


「本気を出させてもらうぞ」

「…ああ。俺も本気であんたと戦う!」




第57話




衝撃波が地を走る。
激しい斬撃が森一帯に響き渡る。
地を蹴って相手の懐に飛び込み、互いの体力と精神力とを削り合う。


「剛・魔神剣!」

「くっ…!」


盾となった双剣から、クラトスの一撃がびりびりと伝わる。
鋭く重く、迷いがない。

彼も、大切な何かを背負っているかもしれない。
けれどそれはロイドも同じだ。
この勝負、負ける訳にはいかなかった。


(一旦間合いを…っ!)


ロイドの肩に鈍い痛みが走った。
この感覚は間違いなく「斬られた」時のものだ。
頬に出来た傷口を拭い、ロイドは肩で息をする。

何とか間合いをとることには成功したものの、攻撃の手が止む訳はなく。

ロイドの足元に、大きな魔法陣が出現した。


「――グレイブ!」


そう。
クラトスはロイドと違い、魔術を使えるのだ。
接近戦では剣を振るい、遠距離では魔術を放つ。

しかしそれは充分すぎるほどに承知していたし、覚悟もしていた。


「うおおおおおお!!」

「!」


ロイドは地を蹴り、上空へと回避していた。

二本の剣を力いっぱい振りかぶり、クラトス目掛けて振り下ろす。
力と体重と重力とをかけた一撃は、クラトスを僅かに後退させた。

力と力がぶつかり合い、地面が抉れる。


(え…?)


過度の衝撃に堪えきれなかったのだろうか。
右手に握っていた剣が、折れてしまった。

その隙をクラトスが逃すはずもなく、左手に握っていた剣は弾き飛ばされていた。
がら空きになったロイドに対し、クラトスは容赦なく剣を構える。

絶体絶命のピンチの中、ロイドは拳を握った。


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