「…あ、そうだ。さっきのって何だったんだ?」

「さっきの?」

「俺がゼロスを見付けたあの時、何か言いかけてただろ」


ぽん。と、何かを思い出したような表情で手を合わせたクレア。
どうやら二人のやり取りを見ているうちに、すっかり忘れてしまっていたらしい。


「えと…」

「世界が統合されたら、ロイドくんはどうするのかなあって。…な、クレアちゃん?」

「え?…う、うん」


でもどうして?
そう紡ごうとした唇は、ゼロスの人差し指によって塞がれていた。

ぱちりとウインクを見舞って、ゼロスは続ける。


「クレアちゃんの考えてることは、どんなことでも分かりますから」


そうは言っても単なるはったりであり、ゼロスの勘が偶然働いただけなのだが。
しかし当のクレアはといえば、先ほど自分が考えていた内容を読み取られてしまったのではないかと思い込んだようで。

みるみるうちに、クレアの頬が紅潮してゆく。


「へ…?え、えっと…あの…クレアちゃん?」


真っ赤になった顔を見られるのが恥ずかしくて、クレアは深々と俯いてしまった。
どうすればいいのか分からず助けを求めるゼロスの視線に、ロイドは仕方なく言葉を紡ぐ。


「俺、こいつらを回収するつもりなんだ」


そう言ってロイドが一撫でしたのは、左手に装着されたエクスフィア。
母親の形見であり、彼女の‘命’そのもの。


「このままこれを放置しておいたら、コレットやプレセアみたいに自分を失う人が出てくるだろ。だからそうなる前に、回収した方がいいと思うんだ。それが、エクスフィアの力を借りて戦ってきた俺の、こいつらへの感謝…なんだけどさ」

「そっか…そっかあ…。えへへ、よかった…!」


ロイドの瞳の奥に映る一人の少女の姿を見付け、クレアはにこりと微笑んだ。
柔らかな金糸を揺らして優しく微笑む彼女の、ほのかな恋心を知っていたから。

そうと知らないロイドはクレアの言葉に首を傾げていたが、ゼロスは気付いていたようだった。


「ロイドくん。これから先、コレットちゃんを泣かせるようなことはするなよ?」

「は?」

「コレットを泣かせたら、いくらロイドでも許さないんだからね!」

「…?」


困惑するロイドの様子に、ゼロスとクレアは声を上げて笑い合う。
楽しい時間ほど早く過ぎるとはよく言ったもので、いつの間にか夜も大分更けていた。

このまま時が止まってしまったらいいのに。
そう思うのはきっと、私のわがままなんだろう。














to be continued...

(11.04.07.)


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