「でひゃひゃ!バレちまったか〜」
「ゼロス!」
へらへらと笑う彼に釣られて、クレアはにこりと微笑み返す。
そんな彼女とは対照的に、ロイドは呆れ顔でゼロスを迎えた。
二人の間に割り込む形で、ゼロスはベンチに腰掛ける。
「お前…いつからいたんだよ」
「ロイドくんが勘違いしたところからー」
「あっ、あれは…!」
服と同じぐらい真っ赤に染まったロイドの顔を見て、ゼロスは笑い、クレアは首を傾げる。
静かな夜に響くゼロスの笑い声に、心配そうに見上げるクレアの瞳。
何だかとってもいたたまれなくなったロイドは、二人の目の前でわざとらしく、大きな咳ばらいをしてやった。
「で?」
「んあ?」
「何をしにきたのかって聞いてんだよ」
「あー…それはだな…」
二人の行方が気になって立ち聞きしにきました。
なんて正直に言える訳がなく、ゼロスは気まずそうに視線を泳がす。
ロイドの冷たい視線をひしひし感じ、渇いた笑いを浮かべる彼を救ったのは、クレアだった。
「きっと、ゼロスも私達とお話がしたかったんだよ。ね?ゼロス」
「そ、それそれ!そうなのよロイドく〜ん」
「………」
「ほ、本当だぞ!俺さまクラトスがエターナルソードやエターナルリングのことも知っててずっと黙っていやがったなんて全然……あ」
「エターナルリングが、どうしたって?」
ゼロスの肩がびくりと震え、彼の蒼色が忙しなく動き回る。
何とかごまかそうとクレアの肩に手を伸ばすが、それは易々とロイドに引っぺがされてしまう。
ゼロスは、渋々といった表情で語り出した。
「あいつは…何もかも知ってたんだぜ。エターナルソードは人間には使えないことも、コレットちゃんの病気のことも、エターナルリングの作り方も」
「まあな。それを思うと…早く言えよ、とは思うな」
「だろ!」
いつになく真剣なゼロスの横顔に、クレアは思わず笑みを零す。
一瞬、どっちが子供なのか分からなかった。
(…そっか。私…)
分かった気がする。
この気持ちが、一体どこから生まれるのか。
クレアは、左胸に手を翳した。
「でも、教えられてたところで…俺達はクラトスを信用しなかったと思う。だからあいつなりに手順を踏んで、俺達の為に色々準備してくれたんじゃないかな」
「…まあ、そう言われると…そうかもな。何だか俺さま、一人で怒ってバカみてーだな」
「そんなことないよ。お前が怒ってくれたお陰で、クレアが気持ちを伝えてくれたお陰で、大分冷静になれたみたいだ。気負いはなくなった」
ロイドの鳶色が、二人を捉えた。
いつも通りの強い意志を宿したそれを見て、クレアは胸を撫で下ろす。
ロイドは星空を仰いだ。
「…明日…クラトスと戦って、それから改めて聞いてみるよ。あいつが…何を考えて、何をしたかったのか」
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