「疲れた顔をしているな」

「そうかな」

「クルシスは崩壊したが、まだ大きな問題が残っている。疲れて当然だ」


クラトスは強い。

その実力を、ロイドは誰よりも知っている。
一番近くでクラトスの強さを知って、体感して、憧れていたから。

彼に勝利しなければ世界は滅ぶ。
明日、世界の命運は決まるのだ。


「でも、これが最後だ。だけど最後に…クラトスと戦うことになるなんて…」

「父親を生かしておきたいというお前の気持ちはよく分かる。そして、世界を統合したいという気持ちも」

「…ああ。このままじゃ大地は消滅する。…みんな死んじまう」

「こんな時には、二通りの選択方法がある」


やりたいことを選ぶか、やらなければならないことを選ぶか、だ。

小さくなってゆく赤い背中を見つめ、呟き、リーガルは天を仰いだ。


「なあ、大丈夫かい?」

「え?ああ…」

「…はは。ごめんよ。大丈夫かいって聞いて、大丈夫じゃないなんていうあんたじゃないもんね。バカだね、あたしは…」

「いや、本当に大丈夫だよ。ちょっと…迷ってるだけさ」

「そうだよね。迷うし、混乱するよね。…クラトスのこと、あまりにも突然だったしね」


父親だと分かって再会する暇もなく、彼と一騎打ちをしなければならないこの現状。
例え勝利出来たとしても、体内のマナを解放した彼を助ける方法は、未だ見付かっていない。

けれどクラトスを倒さなければ、世界は滅亡への道を転がり落ちるだけ。


「でも、時間がない。結果を出さなきゃ。コレットの時みたいに、中途半端にどっちも救いたいなんて…今度は許されないと思うから」

「実の親子が命を掛け合うなんて…酷すぎるよ」

「しいな…。お前がそんな顔することないよ。ありがとう。…俺、ちゃんと考えるから。お前がそんな顔しないような答え、探してみるから」

「ごめんよ。元気づけられなくて…」


しいなの言葉に、ロイドは笑った。

ロイドは強い。いつだって前を向いていられる。
だけど今回は、そうもうまくはいかないようだ。


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