《エルフの隠れ里 ヘイムダール》にたどり着いたクレア達一行。
彼女達を待ち受けていたのは、村の族長だった。
「客人は既に、オリジンの眠るトレントの森へ入って行った」
「…分かりました」
「では私達はここで…」
「待ってくれ。先生、ジーニアス」
ロイドの呼びかけに、村を去ろうとしていた二人が振り返る。
彼女達はハーフエルフであるが故に、村への入場を禁止されているのだ。
「族長。お願いだ!この二人を村へ入れてくれ!」
ロイドが言う「この二人」とは、リフィルとジーニアスのこと。
彼の言葉に目をひんむいたのは、目前の族長ではなく、門番の二人とセイジ姉弟だった。
「今だけでいいんだ。二人は俺の大切な仲間だから、クラトスと決着をつけるところを見届けて欲しいんだよ!」
「何を言う。ハーフエルフが村に入るなどもってのほかだ」
「あんた達のその言葉がクルシスを生んだんじゃないのか!」
「何!?」
ロイドは優しい。
仲間の為に、本気になって怒ってくれる。
だけどどんなに頑張っても、変わらないものがあるのも事実。
差別の溝は、暗く深い。
「待て!二人共」
躍起になったエルフ達とロイドの仲裁に入ったのは、族長だった。
彼の一声で、エルフ達は冷静さを取り戻す。
「我々とハーフエルフとの溝は暗く深い。しかしお前の言葉にも一理ある。よってただ今からオリジン解放までの間だけ、二人の入村を認めよう」
「族長!」
「ただし、二人は如何なる施設も使うことが出来ない。よいな」
族長は、厳しい視線でセイジ姉弟を捉える。
そこにはまだ、彼女達にとって心地好くない感情が込められていたが、二人は静かに頷いた。
「…結構です」
「…やな感じ」
二人の返事を聞くと、族長は村の奥へと消えてしまった。
門番達も任に戻り、村のエルフ達は一行との距離をとる。
彼らの視線は、冷たく鋭かった。
「不安なの?」
「え?」
気持ちを落ち着かせる為、クレア達一行は村で一夜を過ごすことに。
自由行動になった仲間達はベンチに腰掛けたり、川を眺めたりしている。
不安そうなロイドの横顔を見て、リフィルが言った。
「クラトスを殺さなければオリジンは解放されない。よしんば戦いを回避出来ても、オリジンは解放しなければならない。オリジンを解放すれば、クラトスは死ぬかもしれない。…堂々巡りだわ」
「…うん。クラトスと話をしたいよ。本当に、別の方法はないのかって」
「別の道がないことを想定して、決心しておく必要があるわね」
「…先生」
「ごめんなさい。冷たい言い方しか出来なくて」
コレットやクレアのようには、私はなれない。
彼女達よりも、この世界の醜いものや汚いものをたくさん見てきたから。
現実は甘いものじゃない。そう、我が身をもって知ったから。
「いや…先生はいつも、わざと俺達に難しいことを言ってくれてるんだ」
「ロイド…」
「今夜中に決心するよ。クラトスを倒すかどうか」
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