今度こそ何のトラップもなく転送装置を目に出来たロイドとジーニアス。
あと一歩で足が届く、はずだったのだが。

突如として目前に現れた壁が、二人に迫る。


「こっちに来るよ!」

「やべぇ、逃げろ!」


元来た方向へ引き返すも、やはり壁が出現した。
ロイドが右にジーニアスが左に走るも、それぞれの目前に壁が現れる。

――四方を、囲まれた。


「こうなったら、俺とお前で攻撃して、あの壁をぶち抜くぞ!」

「そんなこと、出来るの?」

「ドワーフの誓い第16番。成せばなる!どうせ失敗したらあの世行きだ。全力で行くぞ!」

「あはは、ロイドらしいや。いいよ、やろう!」


いつだって、突拍子もない考えを提案するロイドが大好きだ。
ロイドと一緒なら、どんなに難しいことも出来る気がして。

眩しくて優しくて、馬鹿みたいに真っ直ぐなロイドがボクの憧れだった。


「いち、にのさんで行くぞ」

「…ロイド」

「な、何だよ」

「…ううん、何でもない。ボクの方は、準備完了だよ」


二人は、武器を構えて呼吸を整える。


「いち、にの…」

『さん!!』


ロイドは魔神剣を、ジーニアスはファイアボールを壁にぶつける。
予想通り空いたそれほど大きくはない穴に向かって、ロイドは走った。

その隣で、ジーニアスは静かに目を瞑る。


「ほら見ろ、上手くいっただろ?」

「ロイドの作戦にしては、上出来だったよ」


声の距離感に違和感を感じたロイドが後ろを振り向けば、立ち尽くすジーニアスの姿。
二人で協力して破った壁は、もう人が通れるほどの大きさではない。


「唯一の誤算は、ボクの運動神経のニブさかな」

「ジーニアス!」

「へへっ、失敗しちゃった」


ぺたり、と。
ジーニアスは力無く地面に手をついた。


「お前…俺を逃がす為に?」

「ち、違うよ!」

「嘘だ!こうなると分かっていたんだな!?だったら何で!」

「ロイドだって…立場が逆なら同じことをしたんじゃない?いつだって、困ってる人を見ると、放っておけなくてさ。後先考えずに飛び出しちゃって」


馬鹿みたいに優しくて、馬鹿みたいに明るくて、誰よりも大好きなボクの友達。

ジーニアスは、震える足でゆっくりと立ち上がった。
迫り来る‘死’という恐怖に見栄を張って、彼はにこりと微笑む。


「でも、そんなロイドが、ボクの憧れだった。ボクも、ロイドみたいになりたかった。さあ、早く行ってよ。手遅れにならないうちにさ」

「ふざけるな!お前を置いて行けるかよ!」

「行ってったら!ボクは…ロイドと違って、臆病なんだ。いざとなったら、体が震えてきちゃって…最後に格好悪いところ、見せたくないんだ」

「ジーニアス…」

「行けよ!行けったら!!」

「バ、バカ野郎!」


ロイドは走った。
仲間を失って恩師を失って友達を失って。
ロイドは、走る。


「大好きだよ、ロイド。ボクの、一番大切な、友達…」














to be continued...

(11.04.05.)


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