鳥の囀りで、クレアは目を覚ました。
窓の外から漏れる光が朝を知らせる。
昨日のことが夢だったかのような、清々しい朝。
しかし胸元で光り輝くペンダントを見つけ、昨夜の出来事が夢でないことを知る。
これは、ゼロスから手渡されたものだ。
「俺さまの、信頼の証」
そう言ってクレアの首にかけられた宝石は、どこか見覚えがあるような気もする。
彼の髪色を彷彿させる鮮やかなそれを一撫でし、クレアは準備を始めた。
「みんな!アルテスタさんは!?」
「何とか持ち直したよ。あの嫌な医者、腕は確かだった」
「ミズホのみんなに護衛を頼んでおいたから、心配は無用サ」
朝一でレアバードを飛ばし、アルテスタの容態を知らせにきてくれたジーニアス達。
彼らの顔には疲労が滲んでいたが、それ以上に安堵の色が窺える。
これで一つ、心配事が消えた。
「…俺も、考えたことがあるんだ。このままずるずるクルシスの出方を待ってても世界は変わらないだろ?だから、今度はこっちから仕掛けよう」
「はは〜ん!やる気になったか!クルシスに殴り込みだな」
「ああ。目的は二つ」
千年王国設立の阻止と、オリジンの解放。
そう宣言したロイドの瞳は、真っ直ぐ何かを見据えていた。
「でも、オリジンを解放すればクラトスの命は…」
「…まだ、よく分からない。でも…まだ死ぬと決まった訳じゃないし、あいつが俺達の味方をするかも分からない。分からないことを悩んでる暇はないさ」
ロイドの‘心’が強いのは、世界を救いたいという強い思いと、信じ合える仲間が隣にいるから。
だから彼は、いつでも前を向いていられる。
クレアは、そんなロイドが羨ましかった。
「エターナルソードはどうするの?仮に、オリジンの封印を解いたところで、ロイドでは装備出来ないのでしょう?私もジーニアスも剣を扱えるのかどうか…」
「それなら心配には及ばねぇ。…俺さまがどうして魔法剣を使えると思う?クレアちゃん」
「私?…え、えと…」
「ぶっぶー!時間切れ。答えは『テセアラの新技術で魔導注入を受けた』から。俺さまは人間だけど、エルフの血も入ってるって訳だ。これなら何とかなりそうだろ?」
まさか。
こんなところで最後の難関を突破出来ようとは。
「ま、剣の扱いはロイドくんほどじゃないけどよ」と謙遜するゼロスだったが、そんなことはない。
事実短時間とはいえども、天使化したクラトスと同等にやり合っていたのだから。
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