あなたはあなた。
わたしはわたし。
見た目も性別も違うけれど、手を取れば…ほら。

『同じでしょ?』

‘命’は一緒。
わたしは生きている。
あなたも生きている。

みんな…‘生きている’




第50話




「素晴らしくクサい演説だね。ご苦労様」


少年が両手を翳すと、眩い光が出現した。
刀を構えていたレネゲード兵をいとも簡単に弾き飛ばし、二つの命が奪われる。

真っ赤な返り血を浴びながら、彼は眉一つ動かさなかった。


「…ミトスっ!」


涙混じりの声で、クレアは叫んだ。
わずかに震えるミトスの肩。けれども彼は、振り向いてはくれなかった。

少しずつ後退するユアンに詰め寄り、先ほどと同じように光を放つ。
宙に浮くユアンの身体。
それを眺める彼の瞳は、一切の感情を秘めてはいなかった。


「ボクが気付いてないとでも思った?残念だったね。クラトスにはプロネーマを監視につけてたんだ。ロイド達に情報を流していたみたいだからね」

「くそ…っ!ユグドラシル!お前が、どうしてここに…!」

「なかなか面白い趣向だったよ。ボクの邪魔ばかりする薄汚いレネゲードが、お前だなんてさ。本当なら殺すところだけど…姉さまに免じて、命だけは助けてあげるよ」


そう言うと、ミトスは笑い出した。
動けないユアンの腹を蹴りながら、この世のすべてを嘲笑うかのように。

――どくん。


「…っ、ミトス!」


心が拒絶していたのは、知りたくなかったから。否、気付いていたから。
自分達を庇ってくれたユグドラシルが、この少年であると。
友達の――ミトスだと。

堪らず駆け出そうとしたクレアの腕を掴んだのは、リフィルだった。
彼女が静かに首を振る横を、ジーニアスが走る。

その表情は、苦痛に歪んでいた。


「ミトス…っ!…やっぱり…」

「…やっぱり?やっぱり信用出来なかった?……正解だね、ジーニアス。ボクもお前なんか信じてなかったよ!」


二つの光が、アルテスタとタバサに命中する。

だったらどうして、そんなにも悲しそうな顔をしているの?
自分自身を偽って、自分を苦しめないであげて。

「痛い」って、心が痛いって、泣いてるよ…!


「…アルテスタさんっ!タバサあっ!」

「どうして、ミトス!どうしてだよ!何でタバサや、アルテスタさんを傷付けるのさ!あんなに仲良くしてたじゃない!」

「タバサ…!不気味なほどボクの姉さまに生き写しの、あの人形!ずっと気に入らなかった。あいつは姉さまの心を受け止めきれなかった。出来損ないの器だ。見るだけで反吐が出る!」


それじゃあ、アルテスタさんやタバサと楽しそうに過ごしたあの日々は、全部ぜんぶ嘘だったの?

私達に笑いかけてくれたあの笑顔は、本物じゃなかったの…?


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