大きな背中に憧れていた。
いつか自分も父さんみたく強くなって大切な人を守るんだって。

小さい頃から、その背中を追いかけていた――。


「…クラ、トス…?」


どうして。


「…無事か?…なら、いい」


どうして助けてくれたんだ。
どうして庇ってくれたんだ。
どうして…そんな風に笑うんだ。

これじゃまるで、本当の父親みたいじゃないか。


「う…うわああああああーー!!俺は…俺は何を信じたらいいんだ!?」

「ロイド!」


彼の名前を呼んだのは、一人の少女だった。
レネゲード兵に刀を突き付けられるも、臆することなく少女は言う。

信じることを教えてくれたのは、彼だったから。


「嘘だ!クラトスが…俺達を裏切ってコレットを苦しめたあいつが…俺の、父さん…!?」

「ロイド!自分を見失わないで!誰の血を引いていても、どんな生まれだったとしても、あなたはあなたでしょ!」

「俺は…俺…?」

「どんな姿になっても、天使になっても、私は私だって言ってくれたのは…ロイドだよ!」


大好きな人にそう言ってもらえたことが、どれだけ自分の支えになっていただろう。
《神子》じゃない、私の名前を呼んでくれた。
いつだってロイドは、手を差し延べてくれた。
私を、助けてくれた。

だから今度は私が…!


「…それに、クラトスさん…ロイドを助けてくれたんだよ」

「…ああ」


刀を向けられた過去があったとしても、今、彼は自分を守ってくれた。
命を顧みず、自身を盾に庇ってくれた。

ロイドは、ゆっくりとクラトスを向く。


「…ありがとう。でもやっぱり俺は、あんたを父さんとは呼べない。あんたの…クルシスのやり方は嫌なんだ。…今まで、たくさんの人が死んだ」


シルヴァラントで暮らす人、テセアラで暮らす人。
レネゲードやクルシスやディザイアンも、みんな犠牲になった人達だ。


「目的の為には犠牲が出てもいいなんて思えないよ。死んでいい命なんてない。死ぬ為に生まれる命なんて、あっちゃいけないんだ。俺はコレットを助ける為に、世界を見殺しにはしない。最後の最後まで、みんなが生きる道を探したい」


諦めることは簡単だ。
けれどそれでは、自ら可能性を潰してしまうことになる。
どんなに辛くても、なかなか方法が見つからなかったとしても、僅かな可能性だったとしても、諦めちゃいけないんだ。

諦めるなと、クレアに言ったあの時のように。
前を向いて信じ続ける。














to be continued...

(11.03.18.)


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