痺れと格闘しながら扉へとたどり着き、それを開けた先に見えたのは、
――ユアンとクラトス。
そして、自身とクラトスに刃を向けるレネゲード兵だった。
「…クラトス!レネゲードはクルシスと敵対関係なんだろ!なのに、どうして…」
「静かにしろ。…もっとも、皆薬がよく効いてぐっすり眠っているだろうがな」
「薬だと…?」
だからこんなにも体が言うことを聞いてくれないのか。
薬を盛られた仲間達が心配だ。
しかし、先ほどから探しているダイクの姿が見当たらない。
「…親父はどこだ。親父に何かしやがったら、お前ら全員ただじゃ済まさないぞ!」
「久々の親子の対面にそんな無粋はないだろう」
「やはりそうか。ハイマで私を狙った暗殺者は、お前だったのだな」
「クラトス。息子の命が少しでも惜しいと思うのなら、我々に従え」
この二人は、一体何を言っているのだ。
ハイマでクラトスを狙った暗殺者がいたことは、クレアから聞いていた。
それがユアンだとは知らなかったが、そんなことよりも彼は、ユアンは今、何と言った…?
「オリジンの封印を解放しろ。さもなければ、ロイドはここで死ぬことになる」
「…う、嘘だろ…?クラトスが俺の…親父な訳ないだろ!俺は信じない…信じられない!」
ロイドは、首を振った。
「実の息子にここまで否定される気持ちはどんなものだ?」
「……フ」
「…その様子では、オリジンの解放に同意するつもりはないようだな。それならば…お前に死んでもらうだけだ!」
レネゲード兵が、ロイドの首に短剣を突き付けた。
ぽたりと滴る赤いそれ。
敵の命ならば、そのまま見捨てるはずなのに。
脅しに構うことなく刀を振るはずなのに。
けれどクラトスは、刀を抜かなかった。
「きさまは家族が出来て変わったな。十五年前のあの時も、アンナを化け物に変えられて、お前は抵抗の術を失った。アンナもお前についていかなければ、あのような姿になることもなかっただろう。…哀れな女だ」
「母さんを愚弄するな!」
レネゲード兵の腹に一撃を浴びせ、ロイドはユアン目掛けて猛進した。
刀を抜き、思い切り振り切る。が、攻撃はユアンに命中することなく、がら空きの肢体を晒すことに。
ユアンの手中から発された濃密なマナの塊が、目前に迫った。
逃げ場は、なかった。
*prev top next#