コレット全快の祝いだと、珍しく食事当番を買って出たゼロス。
タバサと共に、厨房へと姿を消した。


「…あれ?ゼロスは食べないの?」

「ん〜?大丈夫大丈夫。俺さま、クレアちゃんがおいしそうに食べてくれるだけで幸せですから」

「えへへ…。ゼロスの料理、とってもおいしいよ!」


以前から思っていたが、ゼロスは料理が上手だ。
ジーニアスのように繊細さがある訳ではなく、リーガルほどこだわりがある訳ではないが、取り分け見た目に関して、彼に敵う者はいないだろう。

また、味も確かなのだ。


「何か、飯食ったら急に眠くなっちまった…。俺、先に横になってるわ」

「食べてすぐ寝ると消化に悪いわよ」

「大丈夫か?やはり疲れが溜まっているのではないか?」

「大丈夫だよ。ちょっと横になるだけだから…」


用意された寝室へと向かうその足取りは、何だか少々おぼつかない。
腰に下げた双剣を外すことも忘れ、ロイドはベッドに飛び込んだ。


「ふああ…」


ロイドの姿を見送るや否や、クレアも睡魔に襲われた。
仲間達の言うように、緊張の連続で疲れが溜まっていたのだろうか。

彼女もまた誘われるかのように、寝室へと足を運んだ。



















(…!体が…痺れてる…?)


何者かの気配を察し、ロイドは目を覚ます。
ベッドから降りようと手を伸ばした。つもりなのだが、体は思うように動いていない。

モンスターに麻痺毒を浴びせられた時と同じく、体の自由がきかなかった。


「…父親に会いたくないか」


目が段々と暗闇に慣れ、頭が少しずつ覚醒する。

月明かりに照らされてぼんやり浮かび上がったのは、レネゲードの党首でありクルシスの天使でもある――ユアンだった。


「!?…親父に、何か、したのか…!」


ロイドの脳裏に、ダイクの顔が蘇った。
まさか、ここにきて家族を巻き込んでしまうだなんて。

無事でいてくれと願うロイドの気持ちなど知るよしもなく、ユアンは部屋から姿を消した。

「外で待っている」と、そういうことなのだろう。


(ロイド…?)


ふらふらしながら扉に向かうロイドの姿を見つけ、クレアは声を掛けようと息を吸った。
だが、彼女もロイドと同じく体が思うように動かないらしい。

声を出すことも、手を伸ばすことも、追いかけることも叶わず、クレアはロイドの背中をただ見送るしかなかった。


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