このあたたかさを、この瞳を、私は知っている。
「…!」
「ど、どうして…」
クレア達を庇ったのは、ユグドラシルだった。
プロネーマは彼の仲間であり、一行は彼の敵であるはずなのに。
プロネーマは、階段を駆け降りた。
「ユグドラシルさま!」
「プロネーマ!何用だ」
「…は。あの…例の件が、動き出しました故…」
「分かった。…覚えておけ。すべてを救える道が、いつもあるとは限らない。ロイド…お前の追いかける道は、幻想だ」
ちらり、と。
戸惑うジーニアスとクレアを一瞥し、天使達は姿を消した。
「どうして、俺達を見逃したんだ?」
ふと、ジーニアスは自身の足元に転がっていた『あるもの』に気がつく。
それは、彼がクレア達と一緒に渡したはずの、小さな笛。
何故、ここに…。
「…まさか…」
信じたくない。
信じられない。
けれどそうだと仮定すれば、すべて辻褄があう。
自分達を見逃した理由も自分達を庇った意味も。
「…どうしたんですか、ジーニアス」
「…何でも、ない」
「…さっきの感覚は…」
知っている。
けれど思い出せない。
あれは、あの瞳は…。
「ロイド。一刻も早く、コレットの治療を!」
「!」
リフィルの声で、クレアの意識は現実に引き戻された。
そうなのだ。コレットが、倒れてしまったのだ。
クレア達一行に残された時間は残りわずか。
今は何よりもコレットの命が最優先だと、クレアは無理矢理思考することをやめた。
アルテスタの元へ行き、《ルーンクレスト》を生成してもらわねば。
(違う…)
――どくん。
(思い出せないんじゃない…)
――どくん。
(私の心が、思い出すことを拒絶してるんだ…)
――どくん…
to be continued...
(11.03.18.)
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