「オリジンはクラトスが封じている。どの道お前にその剣は装備出来ない。エターナルソードの力がなければ、二つの世界を元通りに統合することも出来ない。お前達の旅は、無駄なのだよ」
「無駄…だと!無駄なことをしてるのはお前だろ!死んだ人を生き返らせるなんて!第一そのことと、世界を二つに分けることにどんな関係があるんだ!」
「…世界が二つに分かれいるからこそ、世界は存続している」
「違う。二つに分かれているからマナが欠乏して、数えきれない人々が犠牲になってるんだ!」
マナの枯渇が進んでいるシルヴァラントでは、思うように作物が実らない。
その為に、毎日充分な食事をとることは出来なかった。
クレア達の暮らすイセリアはまだよかった方だ。
しかし小さな村で暮らす人々は、人間牧場に捕らえられていた人々は、必要最低限の食事しか与えられない。
空腹を、飢えをしのぐ毎日。
それは、繁栄世界テセアラでも同じだった。
「考えてみろ。何故、マナは欠乏しているのだ?どうだ、そこの我が同族よ」
「ボク…?……えっと、魔科学の発展で、マナが大量に消費された、から…?」
「そう…。そして魔科学は、巨大な戦争を産み落とした。戦争は、マナをいたずらに消費する」
クレア達が魔術を使うことが出来るのも、マナがあるから。
マナがあるから、人々は生きていられる。
世界にとってマナは水よりも大切なものだと、ジーニアスは言っていた。
「話をすり替えるな。お前が《大いなる実り》を発芽させないから、マナ不足も解消されないんだ」
「すり替えてはいない。大樹が蘇ったとしても、戦いが起これば樹は枯れる。戦争は対立する二つの勢力があるから起こるのだ。だから私は、世界を二つに分けた。あの愚かなカーラーン大戦を引き起こした二つの陣営を、シルヴァラントとテセアラに閉じ込める為に」
「そしてマナを搾取しあい、繁栄と衰退を繰り返すことで、魔科学の発展も抑えられている…という訳ね」
「もっとも今は、少々テセアラに傾きすぎだが」
テセアラが繁栄しているから、シルヴァラントが衰退してゆく。
もしもコレットが再生の儀式を済ませていたら、シルヴァラントは繁栄していただろう。
テセアラを、犠牲にすることで。
「お前はマーテルを助ける為に、《大いなる実り》を犠牲にしてるんだ」
「そうだ。お前がコレットを救う為、衰退するシルヴァラントを放置しているようにな」
「…それは…」
「やっていることは同じだ」
「違う!ロイドはお前なんかと違う!」
ジーニアスの力強い言葉に、ユグドラシルは細い眉を動かした。
今まで変わることのなかった彼の表情が、ほんの少しの色を持つ。
それでもジーニアスは怯むことなく天使を――ユグドラシルを見上げた。
「ロイドは、コレットも世界も救える道を探してる。お前は…それを諦めた、意気地無しだ!」
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