ジルコン。マナリーフ。そして、マナのかけら。
《ルーンクレスト》を作る為に必要な材料は、すべて揃った。
これでようやくコレットを助けることが出来る。

クレアは期待に胸を膨らませたが、喜ぶ間もなく下へ下へと走っていた。
牢屋から脱出したことが天使達に知れ渡り、一行は追われる身になってしまったのだ。


「サンダーブレード!」


時折接触する自動機械の攻撃を避け、雷属性の魔術を浴びせてゆく。
天使達と鉢合えば、応援を呼ばれる前にロイドらが刀を振るった。

急がなくてはいけない。
天使達が追いつく前に、強敵に見つかる前に、コレットを治療しなければならないのだ。

クレア達一行は、ただただ地上へと続く転送装置に跨がった。


「ここは…」


見覚えのある場所へたどり着いたクレア達一行。
あとは塔の出口を目指し走るだけだと、クレアは乱れた呼吸を整える。

その横で、ロイドは言った。


「この剣は確か、ユグドラシルが俺に斬りつけてきた剣…」

「…まさか、これが魔剣エターナルソード?」

「おいおいおい。そんな大事な剣なら、こんなところにほったらかしにしてねーだろ」

「これを持って帰って、ヘイムダールの族長に見せたらどうだろう」


そうすれば、何か有力なヒントを与えてくれるかもしれない。
頑なに閉じられたエルフの心を、多少なりとも開くことが出来るかもしれない。

ロイドの考えに、反対する者はいなかった。

剣に近づき、それを収める台座へと足を踏み入れた、その時。


『資格なき者は、去れ』


ロイドの体が、見えない何かに弾かれた。
どうなっているのか分からないまま尻餅をつく形になってしまった彼の頭上に、いつか耳にしたことのある冷たい声が降り注ぐ。


「無駄なことはやめるんだな」


そこには、十二枚の羽を生やした美しい天使――ユグドラシルがいた。

クルシスを統べる者であり、四千年前の勇者ミトスのもう一つの姿。
仲間と共にカーラーン大戦を終結させ、故郷であるヘイムダールを追われた悲しき英雄。

世界を歪めた、張本人。


「資格なき者はエターナルソードに触れることすら叶わない」

「資格…だと?」

「きっと、オリジンとの契約だよ!それは、オリジンがそいつに騙されて渡した剣なんだろ」


くつくつ、と。
ユグドラシルは嗤った。

まるで、クレア達一行を嘲笑うかのように。


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