マナのかけらを求め、連行されているフリをしながら機械的な建物の中へとたどり着いたクレア達一行。
この建物は、蜂の巣状に物資を壁に詰め込んでいるのが特徴だ。
その高さはクレアの身長よりも遥かに高く、翼の生えた天使でなければ手が届かないだろう。


「マナのかけらを下さ〜い」

「マナのかけらは配布中止だ。元のエリアに帰りなさい」

「わけてくれねぇのかよ」


ロイドが言うと、天使は眉間に皺を寄せた。
何故人間がここにいるのだと、そう言いたげな表情だ。


「人間は黙っていなさい。これは、《クルシスの輝石》を研究する為の素材よ」

「ハイエクスフィアの?そうか。確か人間を使った研究が行われていると言っていたな」

「そうなの。その為に、マナのかけらが必要になったのよ」

「分かった。では、身分証明書を提出してくれ」


連行されているフリは出来ても、身分証明書を偽造することは出来ない。
クレア達一行に焦りの色が見えた、その時。

円形の台座の上に、クラトスの姿が浮かび上がった。
どうやらそれは映像を映し出す機械のようだ。
通信状態がよくないのかクレア達の目に映る映像は、時折乱れていた。


「クラトスさま!」

「《神子》の準備の儀式の為に、マナのかけらが必要になった。そちらに使いを送ったので、彼らに届けさせてくれ」

「分かりました」


天使が深々と頭を下げると、ピッ。という音と共にクラトスの姿は掻き消えた。
あまりにもタイミングがよすぎるのだが、このチャンスを利用しない手はない。

そう考えたのは、クレアだけではなかった。




第48話




「そ、それそれ。それ、俺達のことだ!」

「まさか、お前達がクラトスさまの使いなのか?」

「クラトスさんは、仲間だったんですよ」


コレットは、にこりと微笑んだ。

彼女の言葉はあながち間違っていない。
だが、こういう場面ではたった一言が命取りになることだって有り得る。

否、決して間違っている訳ではない、のだが…。


「しかしさっき、ハイエクスフィアの研究に使うと言っていたが…」

「そうよ。ちょうど儀式にも必要だからということで、私達が取りに来たの。急いで頂戴」

「しかし身分証明書がなくてはな。それにお前達はディザイアン階級のようだし、人間も交じってるし…」

「つべこべ言ってる場合?ユグドラシルさまに逆らうと、怖いよ〜」


それでも渋る天使に、ジーニアスはおどろおどろしい表情でにやりと笑う。
すると天使は頬を引き攣らせ、慌てて頷いた。

純白の翼を羽ばたかせ、一つの壁の穴から小さな木箱を取り出し、一行に手渡す。


「必ず届けてくれよ」

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