「これ、は…」


仲間達の傷が、みるみるうちに癒えてゆく。
あたたかな光は、戦闘不能状態であったリフィルとクレアを蘇らせ、足を引きずっていたしいな達の傷を塞いだ。
防戦一方だったゼロスの顔に、ほんの少しだけ余裕が戻る。

奇跡とも思えるその出来事に、ロイドは再び双剣をしかと握った。


「コレット!!」


クレアの悲痛な叫びが、塔一帯に木霊する。
膨大なマナを消費する「リヴァヴィウサー」は、味方の体力を全回復させ、眩い光が相手を攻撃する天使術。
その術の威力は計り知れないほどだ。

しかし、強大な力を得る為には、必ず何かを犠牲にしなくてはならない。
クレア達が魔術を唱える時に、精神力や集中力を必要とするように。

コレットは自身の‘命’を削っていた――。


「いや…嫌だよコレット!コレット…!」


ぐったりと項垂れるコレットに、必死に治癒術を唱えるクレア。
病に蝕まれている今、自ら‘命’を削れば、病気の進行を促進してしまうに決まっている。

コレットだってそのぐらい分かっているはず。
理解しているはずなのに、私はまた…!


「私に、力がないから…だからコレットは…!」


私は、いつもみんなに助けてもらってばかり。
守られるだけは嫌なのに、それでも迷惑をかけてしまう自分が嫌。

今回だって、私に力があったら…こんなことにはならなかった。
みんなを傷つけずに、コレットをこんな目に遭わさずに済んだはず。

お願いだから目を覚まして…コレット…!


「レイズデッド…!」


――どくん。

すると、コレットはゆっくりと目を覚ました。
優しいミントグリーンがクレアを捉え、にこり。と、弱々しく微笑む。


「…クレア…?」

「これっ、とぉ…!」


安心のあまり身体中の力が抜けた、その時。
クレアの目前に黒い羽根が降ってきた。

ひたり、と。
頬に添えられる冷たい感触。


「抵抗はやめることだ。抵抗すれば、容赦はしない」


クレア達一行を取り囲むのは、無数の天使達。
クラトスは、初めからこれが目的だったのだ。

抵抗するだけ無駄だと悟ったクレアは、コレットの身体を抱きしめた。


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