転送装置の上に、クレア達一行の姿が現れる。
少しずつはっきりしていく塔の内部に、クレアは思わず息を呑んだ。
――すべてが、一緒。
「なんと醜悪な…」
「…なんて悲しい場所なの」
まるで無重力空間にいるかのように、夥しい数の柩が周囲を回っている。
それは、かつてシルヴァラントで見た覚えがある。聞いたことが、ある。
あれは「世界再生に失敗した神子の姿」だと、リフィルは言った。
「いやそんなことより、ここは本当にテセアラだよな…」
「そう…そうだよ!シルヴァラントの《救いの塔》と、全く同じじゃないか!」
「身体が…震える。ここ同じだよ!」
あの時と全く「同じ」だと、仲間達は言う。
シルヴァラントとテセアラ。違う世界のはずなのに、どうして全く同じものが存在するのだ。
そんなのは、有り得るはずがない。
けれどクレアの目は、仲間の目は、あの時と全く「同じ」ものを捉えている。
「ロイド。これに、見覚えはなくて」
「…これは!俺がつけた傷だ!」
リフィルが示したものは、一本の柱。
ユグドラシルの攻撃で弾き飛ばされたロイドがぶつかり、つけた傷だった。
二つの世界の《救いの塔》は、全く同じ…?
「ここで二つの世界は繋がっているのだ。同じで当然だろう」
一行の目前に、クラトスが姿を現した。
あの時みたく、クレア達と対立するその位置に。
「クラトス…またあんたか…。あんたは一体何者なんだ?本当に、四千年前の勇者ミトスの…仲間なのか?」
「…分かっているなら話は早い。神子には、デリス・カーラーンへ来てもらわねばならん」
「まだそんなことを言うのか!世界を歪めてまで、どうしてマーテルを生き返らせようとするんだ!」
「語る必要はない」
ロイドの問いに、クラトスは刀を抜いた。
かつて旅をしていた頃のものとは違う、揺らめく炎を彷彿させるそれ。
クレアは、胸の前で手を組んだ。
「…あんたは、やっぱり俺達の敵なんだな!もしかしたらって…思ってたのに!」
「今更何を言うのだ」
淡々と、感情を表すことなくクラトスは言う。
ちらりと表情を窺うも、鋭い鳶色と目が合うだけだった。
クレア達一行には時間がない。
ここでコレットが連れ去られてしまえば、彼女の命は…。
「今度は…手を抜くなよ!!」
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