白銀の世界。豪勢な屋敷が立ち並ぶこの場所も、振り積もる雪でどこもかしこもが同じに見える。

はらはらと舞う雪の結晶が頬に触れ、クレアの体温で溶けていった。
その儚さを少し寂しく思いながら、クレアは辺りを見回してみる。

真っ白な世界の中に、一つの紅色を見つけた。




第47話




「何だか思い出しちゃうな。世界再生の旅のこと」

「今度はお前の病気を治す為に来たんだ。前とは違うよ」


《救いの塔》入口まで、クレア達一行はやって来た。
マナのかけらを手に入れて、コレットの病気を治療する為。

天使になることでシルヴァラントが救われる、そう信じてやって来たあの時とは違うのだ。
けれどやはり、過去を思い出さずにはいられなかった。


「テセアラの《救いの塔》は、どのような構造なのだろうか。さあゼロス。早く開けるのだ!」

「も〜!おっかね〜な〜」


敵の本拠地に乗り込む今、本来なら緊張する場面のはずなのだが…どうやらそうではないらしい。
リフィルの遺跡モードは、時と場所を選ばず発症するようだ。

ゼロスが石版の前に立つと、紋様の描かれた壁が消滅した。
彼の胸元で、セレスから預かった《クルシスの輝石》が光り輝く。


「ひゃ〜!どうよどうよ!俺さまって今、輝いてる?神子って感じ?」

「はいはいはい。とにかく行こうぜ」

「でひゃひゃひゃ。りょ〜かい!」


あれ…?


「下品な笑い声だな…」

「ゼロス…?」

「ん?」


名前を呼べば、ゼロスはクレアを振り向いた。
いつもと同じ光景のはずなのに、どこか違和感を感じた。

どこかは分からない。
けれど、何かが違う。


「何か…いつも以上に…その…にゃあっ!」

「格好いい、ってか?」

「ふぇ…?」


クレアの腕を掴み、力任せに引き寄せた。
ふらつく彼女を支えるよう腰を抱けば、視界いっぱいに広がる栗色。

一切の抵抗を見せないクレアに、ゼロスはにやりと微笑んだ。


「はいはいそこまでー。こいつがいつも以上にうるさいってんだろ?このアホはいつもこうだよ。ほっときなって」

「でひゃひゃひゃ!」

「…うん…。でも、何かあったら教えてね。私、何でも協力するから…」


しいなに耳を引っ張られ、ゼロスはクレアを解放する。
呆れ顔で扉を潜る仲間達を見送り、彼はぽつりと呟いた。


「…鋭いねぇ」


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