大分落ち着いたのか、セレスは規則正しい寝息を立てていた。
治癒術とは、対象者の持つ自己治癒力を最大限に活性化させる術のこと。セレスは、生れつきその自己治癒力が弱いのだ。
故に、治癒術をかけてもその効果は最大限に発揮出来ない。
仕方のないことだと分かっていても、彼女の為に何もしてあげられない自分が悔しかった。
「もう…大丈夫ね。私達もそろそろ戻りましょうか」
「…はい」
二人が腰を上げたその時、セレスの唇がゆっくりと動いた。
「お待ちになって」弱々しい声音が、二人の耳に届く。
振り向けば、愛らしい瞳が二人を捉えていた。
「あなた達は…お兄さまの…」
「志を共にする仲間よ」
「…ゼロスは、大切な仲間であって、大切な人。私にとって…特別な…」
リフィルの答えに、クレアの反応に、セレスは嬉しそうに目を細めた。
「どーよ。俺さまなかなか、愛されてるだろ」
「随分ひねくれた妹だな」
「そう言うなって。昔から身体が弱くてな。それでもあいつのお袋は…。いや、何でもない」
どこか自嘲的に、
どこか苦しげに、
ゼロスは笑った。
「セレスさん、気をつけてってゼロスに言ってたよ」
「…そっか。まあいいや。じゃあ、行くんだろ?《救いの塔》に」
「…ああ!」
to be continued...
(11.03.07.)
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