「あ!薬草ってあれか」


大きな気泡を生み出すソーサラーリングの機能を駆使し、植物が発する風に乗ってここまでやって来た。

頂上付近にある掘っ建て小屋でひっそりと暮らしていたのは、エルフの語り部。
「難しい場所」にあるという話だったが、それは「マナリーフが滝の裏に生息している」ことを指し示していたのだろう。
語り部の案内により、クレア達一行はようやく本物のマナリーフを目にすることが出来た。

ロイドが指差す先には、黄色い花弁のようなものをつけた、小さな薬草。


「また分かりやすいねー」

「よかったな、コレット!」

「うん…ありがとう、みんな!」


コレットが柔らかく微笑んだその矢先、クレア達一行の足元が揺れた。
地震…ではないらしい。

見れば、マナリーフの目前に巨大な植物が立ち塞がっているではないか。
毒々しい赤い蕾に、樹木のようなその身体。
背中の翼を見る限り、ドラゴンか何かが植物に寄生され、朽ち果てた姿のようだった。


「番人ってことかよ!」


ロイドが剣を引き抜いたのを合図に、一行も各々の武器を構えた。
クレアも自身の胸に手を翳し、仲間達の身体能力を上げる「フィールドバリアー」の詠唱を始める。


「いくわよ…アグリゲットシャープ!」

「フィールドバリアー!」


今まで戦ってきたモンスターの中で、群を抜いて巨大な相手。
ドラゴンに寄生し、それを意のままに操るとは、よほど凶暴な植物なのだろう。
もしかしたら、殺傷能力のある毒なんかを持っているかもしれない。

しかし植物というものはいつでも『火』に弱い。


「灼熱の業火を纏う紅の巨人よ…」


しいなを守るようにして、ロイドら前衛は刀を振っていた。
前衛で防ぎ切れない攻撃は中衛のコレットとゼロスが、後ろからの攻撃はクレア達の魔術で防ぐ。

勝機は、クレア達一行の手の中に握られていた。


「契約者の名において命ず。出でよ、イフリート!」


無風状態の洞窟一帯に、熱風が巻き起こった。
地の底から響く轟音と共に現れたのは、火の精霊イフリート。

改めて目の当たりにする精霊召喚に、クレアは思わず心が震えた。


「消し炭にしてくれる」


その逞しい両腕が振り下ろされると、クレアが使用出来る中級魔術「イラプション」とは比べものにならないほどの巨大な爆発が起こった。

炎の渦が敵を包み込み、触手のような腕を焦がした。
根っこのような足を焼き尽くし、翼を、胴体をも焼失させてゆく。

精霊とは、召喚者の心の強さに比例するのではないかと、この時クレアは考えた。


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