「かわりはないか?」

「経営の方は。ただ、閉鎖したエクスフィア鉱山が何者かに荒らされておりました。ヴァーリの仕業と思われますが、肝心の鉱山最深部への侵入は阻止出来た模様です」

「そのようだな。しかし、もはや荒らされる危険はないだろう。ヴァーリは死んだ」

「リーガルとプレセアちゃんでアリシアちゃんの仇はとったってことよ」

「そうですか…。よろしゅうございました。本日はそのご報告ですか?」


ヴァーリの件が気掛かりだったのは、何もリーガルやプレセアだけではない。
リーガルの代わりにレザレノを支えてきたジョルジュも、同じ気持ちだったろう。


「…いや、別件だ。過去の採掘に関する資料を見たいのだ。資料がどこにあるか教えてくれ」

「過去の採掘に関する資料でしたら、2階資料室の左の部屋にあるはずです」

「そうか、分かった」


こんな時に不謹慎だとは思うが、ヘイムダールに向かうことが後回しになり、クレアは胸を撫で下ろしていた。

ヘイムダールに向かうには、テセアラ王の許可証がいる。しかし、王さまは協力してくれるかどうか分からない。
そうなれば、ゼロスがヒルダ姫に協力してくれるよう事情を説明することは目に見えていた。


(お姫さまは…ゼロスのことが、好きだから…)


改めて言葉にすると、胸の奥がきゅっと締め付けられた。
楽しそうに話をする二人が羨ましくて、だけど私はそれに‘シット’してしまう。そんな自分が嫌だけど、誰かに相談する訳にもいかなくて…。

ヒルダ姫は、私の知らないゼロスをいっぱい知っている。


「ゼロス…」

「ん?どったのよ」

「…う、ううん!やっぱり何でもない」


以前ゼロスの屋敷に泊まった時、クマのぬいぐるみが飾ってあった。
リボンに刺繍された名前は、確か「セレス」

昨日その名前を呼んだ時のゼロスは、いつものゼロスじゃなかった。
あれは、大切な人を想っている顔だ。

私の知らないゼロスが見られるのは嬉しいはずなのに、私は…。
一度そんな風に考えてしまうと、黒くて醜い感情が心の中を支配していくんだ――。


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