「…よし、手分けして資料をあたろう」


ロイドのその一声で、仲間達は夥しい数の書物とにらめっこを始めた。
王城に保管されているという、勇者ミトスとカーラーン大戦の資料。

それを探し出せば、コレットの永続天使性無機結晶症を治す手がかりが見つかるのだ。
クレアは、集中する為に大きく息を吸った。




第45話




「…だめだぁ!」


目的のものを探し始めてから一体どれくらいの時間が経過したのだろう。
文字ばかりを見ていたせいで目がしぱしぱする。

流石のクレア達一行の集中力も、限界を迎えようとしていた。


「これだけ探しても見つからないなんて…」

「他に資料はないのかい?」

「…諦めないぞ。まだ何か、手があるはずだ」

「私、もう一回見直してみる」


陳列された書物にはすべて目を通した。
見落としがないよう仲間達で確認し合ったのだ、目当てのものは「ここ」にない。

だが、ロイドとクレアは手を休めなかった。

ないと分かっていても、どこかに見落としがあったのかもしれないと、必ず見つかるはずだと、希望を抱いて再び一から探し始める。

そんな二人の姿を見て、コレットは申し訳なさそうに声を掛けた。


「…ロイド、クレア。それにみんな…ありがとう。でも…もういいよ。私なら、だいじょぶだか…きゃうっ!」


塔のように積み上がっていた書物に、コレットが頭から突っ込んだ。
ぐらぐらと揺れ動くそれは、大きな音を立てて崩れ落ちる。
本に埋もれるコレットを救出したクレアの頭に、一冊の本が落下した。

どうやらその書物は、棚の上に置かれていたようだ。


「…これは…天使言語…いえ、エルフの古代文字ね。…待って、これかもしれないわ!」

「まさかこんな形で手がかりが見つかるとは」

「あんたのドジは、本当に祝福されてるみたいだねえ」


恐らくしいなは、自身が落下したオサ山道の巨大落とし穴を思い出しているのだろう。
懐かしさと同時に痛みも蘇ったのか、彼女は思わず苦笑する。

恥ずかしさと申し訳なさで言葉にならないのか、コレットは頬を赤く染めながら両手を振った。


「なんて書いてあるんですか、先生」

「《クルシスの輝石》の侵食を防ぐため、マナのかけらとジルコンをユニコーンの術で調合し、マナリーフで結ぶ《ルーンクレスト》を作成した。中枢にマナリーフの繊維利用することで、バグによるクラッキングから…ああ、ここから先は原理になるのね」

「ええっと、つまり。マナのかけらとジルコンとユニコーンの角があればいいのかな?」

「あとマナリーフね。それで《ルーンクレスト》というものを作って、《要の紋》に取り付けることで輝石の働きを抑えることが出来る、と書いてあるわ」


名前すら聞いたことのない《ルーンクレスト》を生成するのは、恐らくドワーフだろう。
クレア達一行だけでは作り方が分からなくとも、職人である彼らなら。

アルテスタとダイク。
二人のドワーフの顔が、クレアの脳裏に蘇った。


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