カーラーン大戦についての資料を求め、クレア達一行は《王都 メルトキオ》へと向かう。

教皇の息がかかっているが、この際贅沢は言っていられない。
一行には時間がないのだ。


(…ミトス、だいじょぶかな…)


一行の気持ちを察したのか、一人で帰ることを決意したミトス。

アルテスタの家は、サイバックから遠い訳ではないが近い訳でもない。
そして、家へたどり着くには別名《死の森》と呼ばれる《ガオラキアの森》を抜けなければならないのだ。
鬱蒼と生い茂る樹木に遮られ、うっすらとしか光が差し込まないその森には、モンスターも出現する。

エクスフィアを装備していないミトスが、もしもモンスターと鉢合わせになってしまったら。


(怪我も、治ったばかりなのに…)


クレアは内心、気が気ではなかった。

と、その時。

仲間達とは別に、人の気配を感じた。
一行以外に、この下水道を使う者はいないはず。


「これが代金だ。あとどれぐらいで国王はくたばる?」

「確かに。へへへ…。この毒なら、あと一ヶ月ってところじゃねぇか?病死に見えるようにという注文だからな。ゆっくりだが、確実に死ぬ毒だ。もう少し辛抱下さるよう、教皇さまにお伝えしてくれ」




第44話




騎士のような出で立ちの者と、受け取った札束を舐めるように数える者。


「ははーん、なるほど。あの健康優良体の国王が病気だなんて、おかしいと思ったぜ」


ゼロスの声に、二人がこちらを向いた。
一人は甲冑を身に纏っている為その表情を窺うことは出来なかったが、もう一人の男は一行の姿を見つけるや否や、蒼白した。

――ヴァーリだ。


「ちっ、国王暗殺の事実を知られちゃ困るんだよ!ここでくたばりやがれ!」


ヴァーリは腰に差した短剣を引き抜き、一行に向かって突進する。が、リーガルの蹴りがそれをいとも容易く弾き飛ばし、プレセアの巨斧がヴァーリの首筋に添えられた。


「…あなたは…許しません!」


斧の柄を握る手に、力がこもる。
皮膚を、血管を切り裂いた刃は血に濡れていた。


「冗談だろ…俺は…こんなところで死ぬのか…あの腐れたアリシアのように…朽ちていくのか…」

「…アリシアを…侮辱しないで!」


ヴァーリがクルシスの輝石を欲さなければ、アリシアは生きていられた。
リーガルが牢に入ることもなく、プレセアが独りになることもなかった。

アリシアの‘命’を奪い、二人の人生を奪った。

否、それだけではない。彼が採掘したエクスフィアは人々の命を吸い取って、この世に存在しているのだから…。


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