クラトスの言葉を頼りに、クレア達一行はテセアラに住むドワーフ、アルテスタの元へ向かった。
中には「安直に信じてよいものか」と眉を顰める者もいたが、他に手がかりがないのだ。
有無をいっていられない。


「そうか…。それで先日の大地震という訳か。他の地方は大したことはないようじゃが、ただ…」

「この辺りでは、崩落や土砂崩れがありまシた。ソれでミトスサんが…」


タバサの視線の先をたどると、部屋の奥からミトスが姿を現した。
一行の姿を見つけるや否や、にこりと微笑む彼。
しかしその笑顔とは裏腹に、額や腕などの数ヵ所に真っ白な包帯が巻かれていた。


「…ミトス、どうしたの?怪我してるじゃない!」

「あ…これは…もう大したことないから…」

「外の岩をご覧になりまシたか?先日大地震があって、ソの時あの岩が私の方へ落ちてきたんでス。危ないところだったのでスが、ミトスサんが助けてくれたんでス。ミトスサんは、私の代わりに怪我を…」

「そうだったの…でも、無事でよかったわ」

「タバサを守るなんて、しっかりしてるぜミトス。俺達を助けてくれたことといい、お前、本当にいい奴なんだな」

「…そんなこと…ないよ」


リフィルの綺麗な笑みに、真っ直ぐすぎるロイドの言葉に、ミトスは思わず顔を赤くする。
必死に恥ずかしさを隠そうとしているものの、語尾が尻窄みになっているのは照れている証拠だ。


「ミトスは…優しい…です」

「そうだよ!姉さんがいなくなった時も一緒に探してくれたし。ボク、ミトスのこと大好きだよ!」


顔を覆った五本の指の隙間から、綺麗なミントグリーンが覗いた。
真っ直ぐに一行を見ることが出来ないのか、その視線は忙しなく動いている。


「…ありがとう」


頬を赤く染め上げながらも、ミトスはクレア達一行を見つめ、ふにゃりとはにかんだ。
クレア達も、それに応えて微笑み返す。

誰が見ても微笑ましいその光景に、射るような視線が一つ。


「…いい奴、か…」


壁にもたれていたゼロスが、ぽつりと呟いた。


「コレットの病じゃが、恐らく『永続天使性無機結晶症』じゃろう。百万人に一人という輝石の拒絶反応じゃ。しかし、治療法は遥か昔に失われたと聞いておる。…古代大戦時代の資料を見れば、あるいは…」

「確かサイバックに、ミトスの足跡を中心にした資料館があったな」

「…ボク、そこ知ってるよ。よければ案内するけど…」

「うん!そうしてもらおうよ」


ミトスの提案に、ジーニアスは元気よく手を挙げる。
「ミトスと一緒にいたいだけだろ」とロイドが茶化せば、彼は照れ臭そうに頬を掻いた。
どうやら、その通りのようだ。

資料館ならば魔物に出会う危険もないだろう。
ロイドの意見で、クレア達一行は《学園都市 サイバック》へ向かうことになった。


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