「…先生。どうしたんだ、急に」

「…いえ、何でもないのよ。ただ…いいえ、やっぱりいいわ」

「ふーん」


言葉を濁すリフィルだが、ロイドはそれについて深く触れようとしない。
彼女が言わんとしていたことは、分からない。
だがそれは、彼女が言いたくなったその時に、仲間達みんなで耳を傾ければよいだけのこと。

早急に聞き出す必要は、ないのだ。


「それにしても、この村も案外捨てたものではなくてね」

「リフィルさまなら村長にもっときびしーこと、言うと思って期待してたんだけどなぁ」

「あら、豚に説教するバカがいて?」

「…こりゃ失敬…」


これでこそリフィルだと、一行の間で笑いが起こった。

小さな第一歩。けれどそれは、とても大きな――




第43話




「コレット!もう大丈夫なのか?」

「うん…何とか…。ごめんね、心配かけちゃって」


村の出口にある門前に、コレットとクレアとクラトスがいた。
まだ少し顔色はよくないものの、動けないほどではなさそうだ。


「ファイドラ殿とフランク殿の依頼を受けて、お前の父親のところへ神子を連れて行く」

「クルシスの輝石のことは…ドワーフの方が詳しいからって、お祖母さまが…」

「そうか…。そうだよな。じゃあ俺も一緒に行くよ。たまには親父にも顔を見せないとな」


しいなには伝言を頼んでおいたらしい。
クラトス曰く「すぐに合流する」とのことだ。

コレットの病を治す手がかり求め、一行はロイドの父、ダイクの元へと向かった。


「ロイドじゃねーか!」


庭の手入れをしていたダイクは、ロイド達の姿を見つけるなり、目を丸くした。
手にしていた如雨露を落とし、家の近くを流れる小川から汲んできたのだろう、澄んだ水が、ちょろちょろと流れ出る。


「親父!元気か?地震の影響はないか?」

「この辺りは、堅い岩盤の上だからな。みんな、ぴんぴんしとるわい」

「ダイク殿。村のマナの血族より依頼を受けてきた。コレットを看て欲しいそうだ」


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