「子供の方がよっぽど素直な目で、神子さま達を見てるじゃないの!あんたは何なの!あんただけじゃないわ!みんな、神子さまやロイド達ばっかり責任を押し付けて!あんた達は何をしたの?…何もしなかったじゃない!」
「我々には力がない…」
先程までの勢いはどこへやら、村長は弱々しく、頭を垂れた。
確かに彼や村人達は、戦う力を持っていない。エクスフィアを装備している一行とは違うのだ。
「…そうさ。でも、力がなくても、疲れて帰ってきた神子さま達を、助けてあげることぐらい出来る」
「村長…あんたの言葉は、子供にも見抜かれるほど底が浅いよ」
「自分に力がないからって、神子さまに何もかも押し付けといて、いざとなったら神子さまを責めるのかい?それはあんまりさ!」
「フォシテスは死んだわ。もうこの村の制約は何もないはずよ」
大人達は、意見することを恐れていたのかもしれない。
違うと指摘されたり、矛先が自分へ向かうことが怖かった。そうなのかもしれない。
純粋に意見する子供達のようにいかない。何故なら子供達よりずっと、色んなことを知っているから。
嬉しいことも。
悲しいことも。
…汚いことも。
「あたしは、神子さま達と牧場の人達を受け入れる。村長、あんたに四の五の言わせないよ」
俺も、僕も、私も、と、次々と賛成していく村人達。
「…みんな…いいのか」
「ボク…ハーフエルフなんだよ…」
「でも、あんたはこの村で育ったんじゃないか。それにロイドも…この村の一員みたいなもんさ」
「クレアも、こっちが忘れちまうぐらいイセリアに溶け込んでるしね」
「…ありがとう。みんな」
人はそれぞれ、感情というものを持っている。
そして、言葉を話す。
それらは、こういうことの為にあるのではないだろうか。
人というものは、
人の‘心’とは、
あたたかく、やさしい。
「…くっ、勝手にしろ!」
中には、なかなか歩み寄ろうとしない人もいる。
けれどその人だって、努力をしていない訳ではないのだ。
すぐに切り替えが出来ないだけで‘心’には、なにかを感じているはず。
人は、協力し合う生き物だから。
「…私も、ごめんなさい。助けてもらったのに…ずっと素直になれなかった。私…牧場で聞いたの。あなた達が、おばあちゃんに優しくしてくれてたこと。…ありがとう」
「ううん。よかった…」
「俺、マーブルさんのこと忘れないよ。…一生、忘れない」
掛け替えのない唯一無二の‘命’
目の前で、自分達を庇って散っていった一つの‘命’
ロイドは、否、クレア達一行は、決してそれを忘れない。
忘れてはならないのだ。
to be continued...
(11.01.09.)
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