大樹が消滅すると同時に、悲しげな‘声’のようなものが響き渡った。
その声で事のすべてを悟った者や、怪我を負っているにも関わらず、無理に起き上がろうとする者達がいた。
「今の、泣き声は…?」
「マーテルだろう。暴走した《大いなる実り》は、マーテルそのものだ」
「…そうなのかな…」
苦しい。と、もがいているようにも。
哀しい。と、嘆いているようにも。
そう聞こえた気がする。
「《大いなる実り》は、聖地カーラーンの地中に再び収束した。取り敢えずは礼を言おう。…ありがとう。《大いなる実り》も、この大地も、失わずに済んだようだ」
「《大いなる実り》が無事ということは、種子と融合しているマーテルも無事なのだな?」
「…お前にとっては、喜ぶべきことだろう。私にとっては…残念なことだがな」
通信機越しなのだから、クレア達に、相手の表情を読み取ることは出来ない。
だが、ほんの少しだけ。ユアンの声色に感情が滲み出ていた。と、思う。
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