「合図だ!」
精霊達と契約した証である指輪を嵌め、しいなは意識を集中させる。
四体もの精霊を一度に使役出来るのか、という不安はあった。
しかし、代わりはいない。自分がやらねばならないのだ。
そうでなければ大地は死滅し、それを必要とするすべてのものが滅びてしまう。
魔導砲に到着するまで、何度も何度も心の中で「大丈夫」だと唱えた。
だけど、足が…震える。
――ちりん。
コリンの鈴が、鳴った。
まるで、しいなの気持ちに呼応したかのように。
「大丈夫だよ」と。
そう言っているような、コリンが励ましてくれているような、そんな気がした。
(…大丈夫)
瞼を閉じ、精霊を召喚する自身の像を脳裏に描く。
意識を集中させ、心の奥底へと語りかける。
開いた瞼の奥に、迷いはなかった。
「蒼ざめし永久氷結の使徒よ」
氷の精霊セルシウスが、
「威き神が振るう紫電の鎚よ」
雷の精霊ヴォルトが、
「気高き母なる大地のしもべよ」
地の精霊ノームが、
「大いなる暗黒の淵よりいでし者よ」
闇の精霊シャドウが、
「契約者の名において命ず。我が前に連なり、陰の力と化せ!」
しいなの前に姿を現し、魔導砲の中心部分に、濃密で純粋なマナを大量に注いでゆく。
充填が完了すると、役目を終えた精霊達の姿は、跡形なく掻き消えた。
遠目から見ても禍禍しく、歪である大樹カーラーン。
未だ暴走し続けるそれに狙いを定め、しいなは声を張り上げた。
「魔導砲、発射!」
to be continued...
(11.01.08.)
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