「素晴らしい!!見ろ、この扉を!これは古代大戦時の魔術障壁として開発されたカーボネイトだ!あぁ、この滑らかな肌触り…見事だ♪」


旧トリエット跡に到着するや否や、リフィルは遺跡について熱く語り出し、終いには自身の頬で遺跡の触感を体感している。


「…いつもこうか?」

「…そうなのか?」

「ああ…隠してたのに」


あまりにも衝撃的な出来事にロイドは勿論のこと、クラトスまでもが目を逸らしていた。
その隣でジーニアスは悲しみに暮れている。

一方のコレットとクレアは冷静だった。
…と言うより、リフィルの変化を気にしていないのだろう。
二人で真剣に説明を聞いていた。


「ん?このくぼみは…コレット、ここに手を当ててみろ!」

「は、はいっ!」


リフィルに促され恐る恐るコレットが石盤に手を当てると、地下へと続く扉が音を立てて開いた。


「わぁ…凄いねぇ!」

「開きました!…なんだか私、本当に神子みたいです」


二人が喜びを分かち合っていると後ろから溜め息が聞こえる。


「神子なんでしょ、もー」


* * *



遺跡内のトラップはリフィルの機転により難なく解決することが出来た。
マーテル教会聖堂にもあった転送装置の上に乗り、一行は封印の間に辿り着く。
祭壇に近付くと、中心で輝いていた光が弾ける。


「うわっ!なに!?」

「火の守護者、クトゥグハだ」


すると、虎のような形をした守護者が現われた。
虎なぞとは比べ物にならないぐらい牙や爪が鋭く、背中には数え切れない程の棘が生えている。
その上、熱気を纏っており、近付くことすら儘ならない。

ロイドとクラトスが果敢に攻撃するも、遠距離からでは簡単に避けられてしまう。
ジーニアスの水系魔術も蒸発するだけだった。


「…もっと強い冷気でなくては駄目だ」

「私に…考えがある」


クレアがおもむろに口を開く。


「ジーニアス、もう一回アクアエッジの詠唱を」

「え?でも…」

「だいじょぶ、私に任せて」

「…分かった」


そうして二人が詠唱に入ると、それを妨害させないよう、ロイドとクラトスがクトゥグハの動きを翻弄する。

時に、けんだまの球が尖った剣先に収まる。


「クレア、行くよ!」

「…うん!」

「アクアエッジ!」


ジーニアスの魔術が発動し、一直線にクトゥグハを目指したその時、


「…アイシクル!」


クレアが魔術を発動させる。
すると、水の弾丸が氷の弾丸へと化してゆく。
三つのそれはクトゥグハの身体に突き刺さる。


「や…やったのか?」


守護者の姿は消え、祭壇から暖かな光が放たれる。


『再生の神子よ、祭壇に祈りを捧げよ』


天からの声が聞こえると、コレットは祭壇へと歩みを進める。


「大地を護り育む大いなる女神マーテルよ、御身の力をここに!」


するとより一層眩い光が放たれ、レミエルが降臨する。


「封印を守護する者は倒れ、第一の封印は解かれた。クルシスの名の元、そなたに天使の力を与えよう」

「はい。ありがとうございます」


レミエルが手を翳すと、そこから生まれた三つの光がコレットを包む。

――次の瞬間。

コレットの背に薄桃色の美しい羽が生えた。
そして身体がふわりと宙に浮く。
クレア達は唖然として、その場に立ち尽くしている。


「天使への変化には苦しみが伴う。しかしそれも一夜のこと、耐えることだ」
「試練なのですね、分かりました」

「次の封印はここより遥か東、海を隔てた先にある。かの地の祭壇で祈りを捧げよ」

「はい、レミエル様」


コレットが返事をすると、レミエルは光と共に消えてしまった。
再び残された天使の羽が宙を舞う。


「コレットに、羽が…」

「うん。それにほら、しまえるんだよ」

「うわぁ…凄いや!」


コレットが羽を出し入れし、それを羽ばたかせると綺麗な光が舞う。
それを見たロイドとジーニアスが大燥ぎする。


(天使への変化…)


クレアが一人浮かない表情でコレット達の様子を見つめていると、横からクラトスに声を掛けられた。


「どうかしたのか?」

「あっ…いえ、なんでもありません」

「…そうか」


それだけ言うと先に歩き出してしまった。
未だはしゃいでいる三人をリフィルが呼ぶ。

――その時。

コレットがその場に座り込む。
顔色は青白く、唇は紫色、脂汗が吹き出ている。


「コレット!大丈夫か!?早く医者に診せないと…」

「待て、動かすな。先程の天使の話を思い出せ。医者に診せるより、安静にした方が良い」


そう言ってクラトスはコレットを抱える。


「うん…。だい…じょぶ…本当に少し休めば平気…。…ごめん…ね」

「では、今日はこの辺りで夜営の準備をしましょう」


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