牧場の外へと続く階段を上りきると、救出班の仲間達が、人々を敷地外へと誘導していた。
どうやら、子供から老人まで、老若男女問わず収容されていたようだ。

久方ぶりの再会に、声を上げて喜ぶ者もいた。


「みんな!…無事でよかった!」

「ああ!あとは、しいなに連絡を…」


クレア達の姿を見つけるや否や、救出班の仲間達に安堵の色が表れる。
しかし、それは束の間の喜びでしかなかった。

停止班の背後に、傷だらけのフォシテスが現れたのだ。


「そうは…させん!」

「きゃあっ!」


振り向くより先に、フォシテスの攻撃が、クレアの左腕に命中する。
なんとか身を捩って、急所から外したものの、傷を負った箇所からは鈍い痛みが。

ゼロスの治癒術で傷は塞がったものの、切り裂かれたシャツの隙間から覗く細い腕に、どこか違和感を感じた。


「私も、五聖刃と呼ばれた男…ただでは…死なん!劣悪種どもも道連れにしてやる!」

「ディザイアン一の英雄とうたわれたお前が、そのような末路を辿るのか、フォシテスよ」

「…そうか、分かったぞ…。人間風情でありながら、魔力の匂いを漂わす者!お前が、クラトス…か。…ユグドラシルさまのご信頼をうけながら…やはり、我らを裏切るのだな!」


フォシテスの腹部から、大量の血液が滴っている。
否、腹だけではない。頬にも切り裂かれたような傷があり、腕や足から流れ出る赤色は、とどまることを知らない。

もう、自分が死ぬ未来は見えている。

ならば、危険因子となりうる一行を、一人でも道連れにしてやろう、と。
最後の力を振り絞り、改造された左腕で、照準を定める。


「だから人間など…信用出来ぬのだっ!」


鋭い風が、魔科学を駆使して作られた左腕から発射される。
それが向かった先は、


(…私達じゃ、ない!)


――ショコラだった。

武器を持っていない彼女には、反撃する術も、防御する術もない。
もう駄目だと目を瞑ったその時、柔らかな金糸がクレアの目前を横切った。


「…ああっ!」


ショコラを庇ったコレットが、ぱたり、と崩れ落ちる。
まるで、螺子の切れた人形のように。


「こいつ、許さねぇ!」


双剣を引き抜いたロイドは、フォシテス目掛けて突進する。
彼は、もう立っているのが精一杯だった。
避けることも、それを匂わす素振りすら見せず、声を帆に上げる。


「ユグドラシルさま!我らハーフエルフの…千年王国を、必ずや…!」


ディザイアン一の英雄とうたわれた五聖刃フォシテスは、こうして、最期を迎えた。
塵と化した彼を、ふわりと舞う風が、攫っていった…。


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