フォシテスがいなくなった今、一行の前に立ち塞がるものはなにもない。
クレア達は、魔導炉を停止させる為の制御盤に駆け寄った。
まではよかったのだが、パネルを見ただけでは、なにをどう操作すればよいのか分からない。

やはりリフィルに来てもらうべきだったか、と焦りを浮かべたクレア達。
すると、その様子を察したのか、クラトスが進み出た。


(…すごい…)


クラトスは、滑るような指使いで機械を操作していく。
『なにかよくないこと』の雰囲気を醸す毒々しい色のボタンを押せば『魔導炉 停止』の文字が、浮かび上がった。
ロイドとクレアは、終始その様子を眺めていたのだが、なにをどう操作しているのか、ほとんど理解出来なかった。


「…あんた、何でも出来るんだな。剣も魔法も機械の操作も」

「人より、少々長生きなのでな」

「長生き?やっぱりあんたもハーフエルフなのか?でも、さっきは人間って言われてたし…」

「私のことより、今は大樹の暴走を止めるのが先だ」


クラトスは、剣術も、魔術も使うことが出来る。
更に、術のバリエーションも、攻撃魔法から治癒術までと豊富だ。
その上、博学である。
「天使」ということを差し引いてでも、クラトスは強かった。
それは、共に旅をしたクレア達ならば、充分すぎるほどに分かることだ。

しかし、彼が言う「人より長生き」とは、どういうことなのだろうか。


(クラトスは…エルフでも、ハーフエルフでもないはず…)


前を行くクラトスの背中を見つめ、クレアは思考する。
エルフであるなら、耳が尖っているはずだ。
ハーフエルフであるならば、フォシテスが放った「人間風情」という言葉がひっかかる。


(どういう、こと…?)


答えは、見つかりそうにない。

思考することをやめ、救助班の仲間達が先に避難しているであろう、出口へ、ひたすらに走った。

と、思った、その矢先。


「…クレア」


クラトスが、クレアの名前を呼んだ。


「…お前は…」

「…?え、えと…」


鋭い鳶色が、クレアの栗色を捉える。
殺気を放っていない、剣を抜く素振りを見せないところから見ると、彼はただ単純に話し掛けただけなのだろう。
だが、油断してはならない。
クラトスは、クレア達一行と敵対するクルシスに属する者なのだから。


「あんた、敵なんだろ?必要以上の会話は、命取りになるぜ」


二人の間に、ゼロスが割って入る。

そう、クラトスは敵なのだ。
今は、たまたま目的が合致したから、行動を共にしているだけ。

仲間であると、錯覚してはいけない。


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