やはり、クラトスは強い。
フォシテスとの戦闘が開始した直後、クレアはそう思った。

クヴァルと同じように、人工精霊を三体引き連れていたフォシテス。
だが、クラトスがそれを一瞬にして無に還したのだ。
蒼色の羽が出現していないということは、天使化すらしていない。


「…ぐっ!」


動揺した一瞬の隙をつき、フォシテスの脇腹に一降りを浴びせる。
更に、反撃する間も与えず追撃に出た。


「紅蓮剣」


長剣の先から出現した火球が、フォシテスの身体を覆い尽くした。
クレア達一行は、なす術なく傷を負ってゆくフォシテスと、手を休めることなく攻撃を続けるクラトスの姿を、ただただ傍観するしかなかった。


「バカな…この私が、劣悪種ごときに…!」


しかし、クラトスの攻撃は、どれもかすり傷を負わせる程度。
決定打を放つ様子は、ない。


(もしかして…)


クラトスが攻撃をする度、フォシテスは後退していく。
反撃すら流される彼の背後には、ぱっくりと開いた空間があった。


「風雷神剣!」


底が見えないほど深いそれに、フォシテスが足を踏み入れた。
いくら五聖刃といえど、翼のある天使のように空中に留まることは出来ず。


「うおおおおおお!!」


真っ逆さまに落下していく。
クラトスは、これを狙っていたのだ。
余計な体力を使わず、的確に相手を薙ぎ倒していくそのさまは、共に旅をしていた頃となんら変わりない。


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