「…お前は…フォシテス!」
「ほう。私のことを覚えていたか。やはりイセリアでお前を逃がしたのは失敗だったな。…この始末、私自身の手でつけてみせる」
クレア達が初めて対峙した五聖刃、フォシテス。
イセリア人間牧場の主である彼は、同族には優しく、敵対する者には鬼のように牙を剥くという。
「同族だからって容赦はしないよ。道をあけろ!」
「同族のお前なら分かるのではないか?我らを蔑む人間の大地など、必要ないと」
「人間は…嫌い。だけど、みんながみんなそうじゃない。ロイドやクレア、ゼロスだってボクの大切な仲間なんだ!それに、ボク達が生きる為にだって大地は必要だろ!」
「我らにはデリス・カーラーンがある。全ての命の源、マナそのものの大地がな!人間によって汚された大地など、滅びたところで何の問題もありはしない」
確かに人は、自分達の暮らしやすいように、生活がしやすいように、自然を破壊してゆく。
けれどそれは、生きていく上で仕方のないことなのだ。否、この意見は、ただの言い訳でしかないのかもしれない。
だが人は、常に大地と共に生きようと。
共存しようとしている。
「…《大いなる実り》は、ユグドラシルにとって唯一無二のもの。我らの邪魔をすれば《大いなる実り》は死に、お前が不興を買おう」
「知った風な口をきくな、人間風情が。これは、ユグドラシルさまの命令なのだ」
「…マーテルが《大いなる実り》と融合しているからか…。そこまでしてマーテルを護るというのか、あれは…!」
「…お前は何者だ?ユグドラシルさまを、あれなどと…!」
「あーもう、うだうだうるせーなー。てめぇがやってるこたぁ棚に上げて、被害者ヅラしてる連中は放っておこうぜ」
ゼロスが、面倒臭そうに頭を掻く。
しかしそれと逆の手は、しっかりと腰の短剣を引き抜いていた。
一行には、時間がないのだ。ここでもたついてしまえば、大樹は更に根を、幹を、枝を伸ばし、すべてを滅ぼしてしまうだろう。
恐らくこのフォシテスという男は、話し合って分かり合える相手ではない。
「劣悪種は滅びる運命にあるのだ。お前達の好きにはさせん!」
to be continued...
(11.01.07.)
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