クラトスの言葉通り、テセアラでも同じように地震が起きていた。
ここのところ頻繁に起こる地震に、人々は過敏になっている。
しかし、揺れる地面を気にすることなく、ミトスは一人、空を見上げて佇んでいた。
美しい双眸は、遥か遠くを見つめている。


「どうシたんでスか。ミトスサん」

「…ううん。今、ジーニアスの声が聞こえた気がしたから…」


一旦おさまったと思われた揺れが、更に大きくなってテセアラを襲う。
流石にこの揺れでは、避難した方がよさそうだと判断したミトス。
タバサと共に家へと踵を返した、その時だった。


「…危ないっ!」


先ほどの地震で緩んだ地盤。巨大な影が、二人の頭上に出現する。

気づいた時には、身体が勝手に動いていた。

尻餅をつくタバサの目前で、岩は、ばらばらに砕け散った。


「ミトスサんっ!…マスター!マスター!ミトスサんが…」


寸でのところで直撃を免れたタバサ。
自身の身代わりになってしまったミトスを助けようと、必死にアルテスタを呼ぶ。
すると、家の中からこちらに向かう足音が聞こえてきた。アルテスタだ。

その間もタバサは、何度もミトスに呼びかけるが、苦しそうなうめき声が返ってくるだけだった。


「ね…ねえ…さ…」


譫言のようなその言葉を最後に、ミトスの意識は闇に閉ざされた。


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