「我が名はしいな。ルナとアスカがミトスとの契約を破棄し、私と新たな契約を交わすことを望んでいる」
『アスカは?』
「来るはずサ。約束したからね」
復活した、リンカの木。
豊かな緑が風に揺られ、遥か彼方まで美しい旋律を運ぶ。優しいメロディーに魅入られ、空から金色が――光の精霊アスカが舞い降りた。
それはそれは、幻想的な光景だった。
『そうですか…。それならばいいでしょう。あなたに力を貸せるものか、その力を試させてもらいます』
一行が各々の武器構えたその時、ルナを守るようにしてアスカが現れた。
これで、世界は再生される。
クレアは胸の前で手を組み、フィールドバリアーの詠唱を始めた。
『力を示してみせなさい』
二体の精霊から、同時に試される。
一体を相手にするだけでも、毎回とてつもない苦戦を強いられるのだ。
今回は、それ以上の戦いとなるだろう。
しかし、クレアは、笑みすら浮かべていた。
幾度となく共に死線をくぐり抜けてきたみんなとなら、大丈夫。
そう、心がいっている。仲間達を、信用しているから。
「フィールドバリアー!」
「行くわよ…アグリゲットシャープ!」
最大限の身体能力が発揮出来るよう、クレアとリフィルは治癒術を施す。
今まで戦ってきた精霊もそうだったが、それぞれの属性と同じ属性の技や術による攻撃は、効果が薄い。
イフリートに炎属性のイラプションはさほど効果がなく、セルシウスなら氷属性の技や術が無効化されてしまう、といった具合だ。
なので今回、光属性の攻撃を得意とするリフィルとクレアは、サポートに徹する。
「…コレット!」
「うん!」
『スターダストレイン!』
無数の星が、天空へと羽ばたいたアスカを襲う。
とうとう滞空することが出来なくなったアスカは、クレアの目前へと墜落した。
充分に力を試した、ということなのだろう。
アスカの身体が、うっすらと透けてゆく。
(…ごめんなさい。きっと、痛かったよね…?)
アスカの翼に手を翳し、ファーストエイドを唱えるクレア。
もちろん、これしきのことで精霊が怪我などするはずがない。
だが、不思議とそうしたくなったのだ。
アスカの神々しさ故、なのだろうか。
(これで、だいじょぶ)
アスカの身体から眩い光が放たれると、精霊はその姿を消した。
残るは、ルナのみ。
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