「助けてくれてありがとう。私は、プレセアを実験に使っていたのに…」

「あんたが俺達を見逃してくれたから、俺達はここにいる。そのせいで処刑されそうになったんだから、助けて当たり前だよ」


ケイトを救出した一行は、彼女の望み通り、オゼットへと足を運ぶ。
幸い、村の外れにあったプレセアの家だけは残っていたが、それ以外はもはや廃墟と化していた。

まるで、初めから村など存在していなかったかのようだ。


「私の正体を知っても?…私の母はエルフだった。父は人間で、今…マーテル教会の教皇の地位にいるわ」

「そんな…!酷過ぎるじゃないか!自分の娘を…処刑するなんて!」

「しかしなぁ。ハーフエルフが罪を犯した場合、例外なく処刑と決めたのは、教皇自身なんだぜ」

「なんだよそれ!自分の娘がハーフエルフなのに、どうしてそんなことを決めるんだよ!ボク、絶対に教皇を許さない」


ハーフエルフであることを隠して、怯えながら暮らす毎日。
本当のことを告白したら、ロイドやコレットやクレアに嫌われるのではないか。と、なかなか打ち明けられずにいた。

結局自分から告白することは出来ず、教皇騎士団に連行された。
ハーフエルフというだけで変わる人々の目線が、痛くて、悲しかった。

だけど、ロイド達は違ったんだ。


「ま、待って。…父に酷いことはしないで」

「どうして!あなたは酷いことをされてるのに!」

「だって、それでも父親だもの…。父が私に、エクスフィアをクルシスの輝石へ変える実験をしろと命令した時、正直言って嬉しかった。やっと、私のことを必要としてくれたって…」

「…!分かんない!ボクには分かんないよ!」

「ジーニアス、少し落ち着いて」

「だって!」


親に必要とされることは、そんなにも嬉しいことなのだろうか?
それは、人の命を奪う行為だというのに。


「…私、少し分かる。レミエルが私のお父さまかも知れないって思った時、あれが死ぬ為の旅だったのに、それでもお父さまがやっと会いに来てくれたと思ったら、嬉しかったから…」

「コレット…」

「…私、一人で考えてみます。父のことや私のことや、ハーフエルフのこと…。本当に助けてくれてありがとう。それから…プレセア」

「…はい」

「…ごめんなさい」


その言葉を最後に、ケイトは森の奥へと姿を消した。
廃墟となったここならば、人が訪ねてくることはまずないだろう。


「…何だか悲しいね。どうして、こんな風になっちゃうのかな」

「二つの勢力は、必ず対立する。シルヴァラントとテセアラ、エルフと人間、天と地」

「そして狭間の者は犠牲になるわ。ハーフエルフも、大いなる実りも、神子も」

「そんなの駄目だ。誰かが犠牲になればいいなんて」

「でもな、人が二人いれば、必ずどちらかが犠牲になるんだぜ。優劣がつく。それは国も世界も同じだ。平等なんて…幻想だ」


そう嘲ったゼロスの表情に、憂いが見えた。
本当に、ほんの少しだけ。


「生まれ、立場、外見、種族…。そんなものに振り回されるんだな」

「でも…心はみんな同じだろ。誰だって自分を否定されれば、傷つくに決まってる。それなのに、そのことを忘れてるんだ」

「心は…同じ…」


ジーニアスは、ロイドの言葉を反復しながら、自身の胸に手を当てる。

――どくん、どくん。

鼓動が、生きている証が、聴こえてくる。


「そうだよね。みんながみんなを思いやって生きていければ、いいのにね」

「少しずつ…人は変われます」

「…そう信じて、出来ることからやっていくしかないよな」














to be continued...

(11.01.04.)


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